幻の手羽先を求めるお客様のために、とことんサービス |
水野店長は、入社5年目のマイスター店長(店長上位職)だ。本部からはさらにその上位の管理職を要請されているが、断り続けている。なぜなら、4年後に出身地の鳥羽で独立するため、現場での感性を磨き続けたい、そして店長としての完成度を高めたいと考えているからだ。(すばらしい!)夢や目標が明確なのは、実力店長の共通点である。 則武店に出向いてびっくりしたのは、半径100m以内に世界の山ちゃんがなんと4店舗もあったことだ! そして則武店、名駅西口店、駅西3号店、駅西4号店のいずれも、月商800〜1400万円で毎日満席ウェイティング状態の繁盛店ばかりなのだ。同ブランドでこんなにもひしめき合っている出店例は、全国を見渡してもほとんど見当たらないだろう。これは「満席になったら近隣に店をつくる」という山本社長の方針を具現化し続けてきたからだ。(究極のドミナント戦略) 水野店長は、則武店以外のこの3つの店舗もフォロー・指導している。そのメリットは二つある。一つは、アルバイトの異動が簡単で、応援体制がスムーズにつくれること。もう一つは、満席になったとき、お客様を近隣のお店に徒歩で案内できることだ。お客様は幻の手羽先を求めているので、他の居酒屋には行かない。ならば、近くの山ちゃんへすみやかにご案内するのがベストに違いない。 幻の手羽先の売上構成比は17%〜20%。さすが看板メニューだ。則武店では、持ち帰りだけでも毎日50人前が出る。3本柱は幻の手羽先(5本400円)、みそ串カツ(5本390円)、どて煮(400円)。すべて名古屋名物だ。 店長方針は「スタッフが楽しんでサービスし、お客様も楽しんで飲食する。これが一番大切」である。全国の出張族が元気な名古屋にやってきて、幻の手羽先のために行列をつくり、1時間も待って手羽先一人前と生ビールを味わい、15分後には名古屋駅へと向かう。そんなお客様も多いという。手羽先を一つ食べるために大切な時間を割いて並んでくれる人たちにおいしい顔で帰ってもらうために、誠心誠意を尽くさなければならないのだ。 |
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トレーニングセンターとブラザー制度 |
アルバイトの採用は本部が実施。名古屋の本部1階に最近完成したトレーニングセンターで、初期教育が行われる。新入社員も新人アルバイトも、ここからスタートだ。 ここは取引先や従業員とその家族を対象とした、一人1000円〜1500円で食べ放題・飲み放題のお店になっている。一般客は入れない。とてもユニークなシステムだ。ここで初期トレーニングを受けてから各店に入るので、店長が新人教育にかける時間が短縮される。 則武店では、新人一人にベテランアルバイトが一人付き、マンツーマンで80時間の教育を行う。これがブラザー制度である。 ランクアップ制度も明確だ。ルーキー→レギュラー→アシスト→アイドル→リーダー→エース→トレーナー→スターの8段階。時給900円から始まり、エースでは1300円になる。また、店長にも5段階ある。一般社員→店長代行→店長→支店長→マスター店長→マイスター店長・統括というように、職位が上がっていくのだ。 水野店長に月間スケジュールを見せてもらった。なんと、月に10本もの勉強会が入っている。山ちゃんサミット(モニターチェック会議)、鉄人会(新メニュー説明会)、打倒手羽先の会(料理研究会)、番付会議(店舗評価会議)、ワールドクレージーサミット(幹部会議)、変クラブ月例会(社員総会)、店長虎の穴(店長勉強会)等々。出勤前に本部で参加するものもある。 急成長している企業は勉強会が多い。仕事しているのか勉強しているのかわからないほどしっかり教育を受けるべきだと私は考える。教育や自主的な勉強によって強い店長が育ち、そして彼らが企業の成長を支えていくのだ。 |
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「利よりも信」をハッピーに実践 |
水野店長の名古屋駅東店時代のエピソードを紹介しよう。ある日、結婚式の二次会予約が入った。最高にハッピーな演出をお手伝いしたいと考えたアルバイトたちは、お祝いのための手づくりアイデアをいくつも用意した。彼らは前日からダンスの練習をし、ミラーボールも準備。当日はケーキカットや新郎新婦の手紙交換など、演出に工夫を凝らした。また出席者全員の写真をいっぱい撮って、一言ずつコメントを記入していただき、アルバムを作成してプレゼント。もちろんお祝いのダンスも披露したし、水野店長もギターを奏でてお祝いした。 まさにお店総出でこのカップルの門出を祝い、出席者と心を一つにして、幸せな気持ちを共に味わったのだ。両家のご両親にもたいへん喜んでいただけたそうだ。 「利より信」は社長方針の一つ。利益よりもお客様の喜びや感動を優先しようという意味だ。これは、まさにそれを幸せな形で実践したエピソード。水野店長にとって忘れられない素敵な思い出の一つだ。 |
「No.1は誰だ?」ありがとう選手権! |
店舗運営上、水野店長が気をつけているのは「店長がワーカーにならないこと」である。則武店は3フロア。店長には、全体の流れを見て忙しくなりそうなポジションを事前につかんでフォローしていく役割がある。前準備を怠らずに万全の体制で望むのが大前提。その上で、「つねに全てを見渡せる立場をキープし、コントロールしています」と語る。 アルバイト一人ひとりにこだわりを持たせるのも水野店長のやり方だ。たとえば、エアコンのフィルターとかトイレの便座などを徹底して掃除しているアルバイトは、そこが汚れている状態は許せないと思うはずだし、不備に気づくのも早いはずだ。このように全員が何かにこだわって気配りしていれば、店はいつだってピカピカになる。 お客様への心配りも同じこと。チェーン店であっても、小さなお店の女将の気持ちで接することが大切だ。一人のお客様ならビールをグラスについで差し上げたり、会話を増やすことなどを指導している。 水野店長はスタッフのモチベーションを上げるために、「NO.1は誰だ」と題して“ありがとう選手権”を実施している。店の入口にスタッフ全員の写真が掲示され、「あの子は笑顔がすばらしかった」とか「おしぼりをタイミングよく交換してくれた」などとお客様から喜ばれた人には、店長から☆印のシールがもらえる。またスタッフ同士でも、「私のポジションを助けてくれてありがとう」のように感謝の気持ちを表す時、ありがとうの○シールを貼る。この2つのシールの数を競い、NO.1を決定するのだ。 お客様に喜んでもらうことに集中でき、スタッフ間の空気もよくなってチームワークが醸成されるという、すばらしい仕組みだ。ぜひあなたも参考にしていただきたい。 水野店長はスタッフとのコミュニケーションを毎日とっている。わずかな時間でもスタンドミーティングで励ましたり、仕事を教えたり、気遣いのアドバイスをしたりしている。水野店長はリーダーシップ能力の高い店長だと実感したが、その根底には部下を思いやる「愛」がある。リーダーシップとは愛のことだと感じさせてくれる取材だった。 ありがとう、世界の山ちゃん、水野店長!独立後の成功も祈ってますよ! |
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