驚異の復活プロジェクト

 サーティワンは1991年に440店舗となり頂点を迎えたが、その後7年間で322店にまで減るなど、状況は年々悪化していった。その間トップが交替し、2000年にプロジェクトX(事業構造改革)が発足。メニューを一旦絞り込み、加盟店への原材料を50%から38%に下げて、替わりにロイヤリティ+広告費で8%を徴収し、加盟店の負担を実質4%軽減した。

負担が軽くなったことに加え、ほとんどの店が店舗リニューアルを行ったことで、売上を2割ほど向上させている。これは、社長と副社長が加盟店1店1店を回ってリニューアルのお願いをしたのが功を奏したためだ。

その後、イオンやイトーヨーカドーなどのSCへの出店に拍車がかかった。また加盟店も複数出店を果たすようになり、2003年12月には500店突破。以後も毎年100店もの新規オープンがあり、今では907店舗に至っている(10月末現在)。来年の後半には1000店舗を突破しそうな勢いだ。チェーン志向の経営者には学ぶところの多い企業だ。

サーティワンアイスクリームのポリシーは、「We make people happy」(アイスクリームビジネスを通じて人々に“幸せ”をお届けすること)だ。5月9日のアイスクリームの日には、あらかじめ決められた夕方から夜の2時間ユニセフ募金に協力いただいたお客様に(レギュラーサイズの)アイスクリームをプレゼントしている。本部からも1個につき10円が寄付される。お客様からの募金と本部からの寄付金は毎年3000万円に上り、過去7年間で1億6000万円の寄付となった。これを西アフリカの学校建設など幼児教育の支援という社会貢献活動に役立てている。(すばらしい!)


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あなたがサーティワンのブランド

 さて、いよいよ山里店長の登場である。彼は加盟店の店長だが、8店舗の統括マネジャーも担当している。錦糸町店はその主力店舗。月商800万円(年商1億円)の店で、平日は20万円、土日は55万円を売り上げ、客数は800人を超える。スタッフは腱鞘炎を起こしそうなほど忙しい。アイスクリームだけでこんなに売れていることに驚嘆する。

サーティワンのオペレーションの基本は、注文・作成・会計を一人で行うこと。お客様と一対一で接するのだ。おまけに新商品などは“テイストスプーン”での試食を100%実施している。決して簡単な仕事内容ではない。「ポテンシャルが最も大切です」と山里店長。採用時にいかにその人の資質を見抜くか、それが店長の腕の見せどころだ。

採用率は20%。5人に1人の狭き門である。採用の基準となるのは、礼儀、第一印象、自然な笑顔。最終的な判断は「この人に接客されたいかどうか」にかかっている。

新人には「あなたがサーティワンのブランド(看板)です」と教育する。初期教育は女性社員が担当。ことに笑顔の教育は、笑顔のステキな人に任せるのが一番だという。素晴らしい笑顔は伝染するのだ。

※写真の女性スタッフは、どの角度から撮っても笑顔がすばらしかった。


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店の雰囲気はコミュニケーションで決まる

 山里店長に、「商品×サービス×クレンリネス×雰囲気」を各5点満点で自己採点してもらった。答えは「5×4×3×5」。5点という数字を言える店長は少ない。しかも雰囲気が5点というのはすばらしい。

2:6:2の法則についても伺ってみた。こちらは9:1:0だ。つまり、優秀なアルバイトが9、普通が1、劣る人はゼロということ。これはすごい数字である。

この2項目のすばらしい数字は、コミュニケーションの賜物だと山里店長は語る。スタンドミーティングからカウンセリングまで、毎日毎時間、すべてのスタッフとコミュニケーションをとり続けているという。閉店後も一緒に食事に出かけたりする。

量だけではない。その質も重視している。たとえばカウンセリングでは、そのアルバイトがその店で働いている背景や、どのような意識や価値観を持って働いているのかまで、よく話を聞いてつかみとり、適切にアドバイスをして、それぞれの店に送り出すようにしている。もちろんその後もしっかりサポートする。今では一人ひとりが何を考えているのか、全員のことがわかるという。店長が部下それぞれを一人の人間として気にかけ、一緒に物事を考えていくようにすれば、部下のお店に対する参加意欲はグンと高まるのだ。

山里店長はアルバイトに「このディスプレイどう思う?」といった質問を投げかけて自ら考えさせ、行動させている。コーチング型の手法だ。その人に光るものがあればどんどん任せていく。商品力はある。ブランド力もある。キャンペーンも成功している。あとは「人の力」だと山里店長は考えている。

店長にはディスプレイ&POP哲学がある。本当に訴えたいことだけを絞り込んで、余分なものはそぎ落としていく。そして効果的な見せ方を訴求し、お客様に注目していただく。最近の自店キャンペーンで店長自ら提案した面白いアイデア例を一つ紹介しよう。それは、この店独自の店別サービスとして、お客様がストップと言うまで、サンデーのホイップクリームを提供し続けるサービスだ。お客様はみんな驚き、たいへん喜ばれたそうだ。「人の力」とは、考えて、アイデアを出して、実践することなのだ。


全店舗の出来事が全スタッフに伝わる仕組み

 「アルバイトのモチベーションを上げるなら、売上をどうこう言うよりも『秋のサンデーキャンペーンの個数が全国何位』だと毎日発表したほうが効果的です」と山里店長は言う(その通り!)。キャンペーンやコンテストは、毎日の個数やシェアの変化、プラスセールスの徹底度などに留意しながら目標を持って臨めるし、その成果が数値ではっきりと表れるので、志気を高めるのにぴったりだ。

 サーティワンでは、月末が31日まである月はダブルのアイスクリーム31%オフというキャンペーンを実施している。オリナス錦糸町店は、このキャンペーンでは常に全国トップクラスだ。他にも多くのコンテストやキャンペーンが行われており、そのほとんどにおいて全国トップ10に入る好成績をおさめている。

 山里店長はまた、お客様がくじ引きのキャンペーンに当選した時は、一緒に心から喜べることが大切だと語る。いつもお客様のことを想い、自分のことのように考えられるかどうか、これがポイントだ。

 たとえばお客様がアイスクリームを床に落とした場合、アイスクリームを交換するだけでは低レベルのサービスにすぎない。まずはお客様の衣服が汚れなかったか、お子さんが泣いていないかなど、気遣う言葉が先決。こういうことは、お客様の立場に立って考えればおのずからわかることである。


日本のサーティワンを牽引するお店に!

 最近うれしいと思ったことを山里店長に伺った。入社を希望する学生アルバイトが増えてきたことが最もうれしいそうだ。「このチーム、このメンバー、この環境で仕事をしていきたいと彼らは言ってくれます。一流大手企業の内定を捨てて、サーティワンに入社してくれる人も多いんです」とのこと。社風の良さだけではなく、山里総括マネジャーの人望の厚さも影響しているのだろう。

 近年、コールドストーンやマーベラスクリームといった新興チェーンが伸びつつあるが、山里店長はそれを前向きにとらえている。競合店ができれば互いに切磋琢磨できてすばらしい、サーティワンの一強独占はむしろ危険なことだと語る。

 山里店長の夢は「20年、30年経ってもサーティワンのブランドが輝いていること」だ。そして「FC加盟店ながらも、ブランドイメージを高めて引っ張っていく存在になりたい」という。「現場の目で物事を正しくシビアに見つめ、本部にアドバイスができるようになりたい」とも語ってくれた。サーティワンのトップを走り続ける店舗であると自負し、誇りを持っているのだ。

 日本のサーティワンを牽引するお店! これからも力強くリードしてほしいと思える、たのもしい店長だった。ありがとう、山里統括マネジャー。