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売上148%アップ、3つのポイント

 谷畑店長の運営方針は「お店のファン(常連客)を増やす」だ。これを着実に実現させ、売上前年比最高148%を記録した。
 谷畑店長が御茶ノ水店に異動して来たのは昨年5月。売上前年比は5月84%、6月93%、7月131%、8月118%、9月48%、10月99%、11月126%と推移。異動後3ヶ月目から確実に結果を出している。本誌面でもこれまでたびたび述べて来たように、優秀な店長は3ヶ月で効果を上げるのだ。
 売上アップのポイントは3つ。
1.店舗アピールの強化
御茶ノ水店はビルの4階にあるため視認性が悪く、1階に看板も置けない状況。近隣には大手居酒屋チェーンの競合も多い。お店をもっと強力にアピールしようと、通勤客に朝ビラを配布。週2日のペースで朝8時前後の2時間、1日500枚を配った。夕方はプラカードとチラシでPR。チラシはうまい棒付きの10%OFF券だ。
2.全員の意識改革
すべてのお客様に対し全スタッフで「顧客満足」の追求に取り組んだ。全員が看板娘の気持ちになり、元気・活気・笑顔で日本を元気にしようという、本来の居酒屋の姿勢を徹底して貫いた。個店とチェーン店両方のよさの融合を目指し、全員で一生懸命に頑張った。
3.常連客づくりに集中
前述の接近戦をはじめ、あたたかい接客で常連客づくりに力を注いだ。谷畑店長は、2度来店したお客様は必ず覚えるという。アルバイトリーダーも社員同様に意識が高く、100人以上の常連客を覚えているそうだ。御茶ノ水店は30〜50代のお客様が多く、ことに近隣の大手企業の社員や大学の職員・先生の間でファンが増加中だ。
 「毎月店長会議で発表される成功事例をヒントにして、新たな試みや改革を実行しています」と谷畑店長。12月号の特集「実力店長6ヶ月養成講座」でも述べたように、店を変えるのは店長の実行力である。すぐれた店長には、よいと思ったことをすぐに行動に移す力があるのだ。

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異動後3ヶ月の守りと攻め

 異動後3ヶ月目に売上前年比131%の実績を上げた谷畑店長。月毎のステップをまとめてみる。

1ヶ月目(QSCレベルの向上)
 まずは全員と面談。会社理念の確認、店長の運営方針、店内整備、当たり前のことを徹底していくことの大切さなどを教育した。連絡ノートにも店長の熱い想いを毎日書き続けたという。さらに、サービスとクオリティの改善に取り組んだ。
●サービス:スピード提供へのこだわり。特にドリンク提供時間の短縮。
●クオリティ:鶏ちゃん焼には技術が必要。不十分な場合スタンダードを維持できない恐れがあるため、店長のお墨付きがなければアルバイトには調理できないというルールを作った。いわば御茶ノ水ライセンスだ。
 1ヶ月目は、1.スピード提供と品質へのこだわり 2.一生懸命な姿勢(挨拶と返事) 3.個人のパーソナリティ。この順序で集中的に挑んだ。

2ヶ月目(FLコストのコントロール)
 フードコストとレーバーコストのバラツキを、コントロールにより改善。原価は30%→28%、人件費は29%→26%、トータル5%のコストダウンだ。原価はポーションの安定化とブラム管理を徹底。小分けポーションによって正確さを増した。また人件費は予算売上に対して80%でコントロール。適正なワークスケジュール作成をはじめ、天候などの状況によるアルバイトへの臨機応変な協力依頼などで無駄を省いた。
 この5%の改善と、その後の売上拡大によって、赤字店から黒字店へと見事に転換したのだ。

3ヶ月目(キャッチングとチラシ配布)
 QSCオペレーションの充実で内部を建て直した後、いよいよ3ヶ月目から攻めの体制へ。前述したように、お茶ノ水駅前で朝ビラ・プラカード・10%オフチラシを通行人に配り続けたことで、徐々にねじべえの知名度が上がり、鶏ちゃん焼の評判が広まっていった。
 3ヶ月でこの店を繁盛店へと導いた谷畑店長が常に最も気遣っているのは、お店の回転率を上げたり売上を伸ばしたりすることではない。「今日来店されたお客様に、次回も来店していただけるかどうかが一番大事。これをいつも肝に銘じながら、日本を元気にするための接客に日々取り組んでいます」と語る。(すばらしい!)
 もちろん売上は大切だ。目標を掲げ、それをクリアするために高い意識をもってどん欲に挑み続けなければ、売上は上がらない。最近こんなことがあった。日商20万円の売上目標を掲げているのだが、閉店間際にその直前までこぎつけた。「もう少しで目標達成です。よろしければ追加のご注文はいかがですか」と常連のお客様に協力をお願いし、達成したそうだ。

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プラス言葉でポジティブな店づくり

 コミュニケーションを図る際、谷畑店長は常に意識的にプラス言葉(明るくなる、元気になる、やる気になるポジティブな言葉)を使うようにしている。例えば、「大好き」「嬉しい」「ついてる」「幸せ」「簡単」「ありがとう」「感謝している」など。プラス言葉をいつも使っていると、そういう言葉を使いたくなる嬉しい出来事が次々と起こるともいわれる。よいことは自ら引き寄せよう!
 また谷畑店長は、アルバイトのよいところを一つでも多く見つけてほめ、自信をつけてもらうことに心を配っている。さらに、日頃からの店長の熱い想いや目標を達成したときの嬉しさなどを、全員にメールで伝えるようにしている。前向きな気持ちや感動を共有したいからだ。「指示をする店長ではなく、楽しく仕事ができる環境をつくる店長になりたい」と笑顔で語る。
 谷畑店長には家族・会社・個人、それぞれの目標がある。家族=笑顔の絶えない幸せな家庭をつくること、会社=日本を元気にするために100店200店と大きくなっていくこと、個人=ねじべえで独立すること、だ。「飲食店の店長は夜が遅くて大変ですが、家族の支えに助けられています。妻への感謝の気持ちでいっぱいです」と、最後にしみじみ語ってくれた。
 家族にもスタッフにも会社にも愛情いっぱいの、素直で明るくてEQの高いすばらしい店長だった。ありがとう、谷畑店長!