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アルバイトの主体性を活かす運営

 4店舗ともにスタッフは全員笑顔で、お店の空気感がいい。売上も絶好調で(例えば池袋サンシャイン通り店は予算800万円で売上実績1100万円)、ワタミ本部の評価も高い。
 現在の店舗の店長は白水オーナーの元部下(店長時代のアルバイト)が多く、ワタミの理念もオーナーの思いもわかっている。オーナーは常に彼らにこの4店を「チェーン店の仕組みを持った個人経営の店」だと語り、両方の良さを併せ持つ店としての経営を心がけさせている。
 特に池袋サンシャイン通り店には個室を設けず、昔風の居酒屋スタイルを取り入れて、全体が見渡せるオープンキッチンにした。スタッフ全員揃って挨拶できたり、お客さまのほうを向いてサービスできたり、スタッフ同士の目配せができるようにしたのだ。「お客さま同士も会話しやすく、いつもにぎわいがあり、お客さまに明日へのエネルギーを養ってもらえる店にしたい」と白水オーナーは語る。
 目指すのは「アルバイト主体の店」。特に力を入れているのが(1)MS(ミステリーショッパー)、(2)SCチェック(毎月2回問題点を検証・改善)、(3)衛生管理。この3つを基本に、全員参加の全体ミーティング(営業反省会)を実施している。
 また、毎週日曜日の朝6時30分から、店長・社員・アルバイトリーダーによるトップメンバーミーティングも実施。彼らが中心となって動き、これを全体ミーティングへとつなげている。
 ランクアップ制度(4段階)も稼働。基準書でチェック。自己申告制で、店長とのカウンセリングによって昇格する。

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涙と感動の卒業試験

 アルバイトの採用率は95%だが、3日間のOFF・J・T教育終了時点で残る人は50%程度。店づくりに対する店長の熱い想いを語るところから始まり、挨拶、ハウスルール、ハンディーの使い方、ロールプレイング、QSC、ビデオ研修、アルバイト主体への心構えに至るまで、とことん指導される。ここまでやるのは無理だと思った人は、この時点で去っていくのだ。
 新店グランドオープン時の3日間の研修はさらに厳しい。徹夜覚悟で臨むこの研修には卒業試験もある。
 まず、他の店舗から8人のトレーナーが選ばれる。(もちろん彼らもアルバイトで、自主的に参加)。そして1人につき3人、計24人の新人を一気にトレーニングする。3日間で全員卒業させるのが目標。ハウスルール、商品知識、レシピ、ドリンク作成、ロールプレイング等々、実技試験とペーパーテストの連続だ。たとえばドリンクは3分で20品目を作成。かなり困難でハイレベルな実技試験だ。あえてハードルを高く設定している。
 不合格が続き、3日目には白水社長から「3日間何をしてきたんだ。全員レベルが低い。こんなことではオープンできない」と活を入れられる。トレーナーも新人も悔しい気持ちでいっぱいだ。何度もやり直しをして、緊張感も疲労も極限に近づいていく。やがて、なかなか課題をクリアできない新人を他の新人が教え始める。教える側だったトレーナーも、そこから大切なことを学ぶようになる。こうして4日目の早朝を迎えるのだ。
 社長から次々と合格が発表され、トレーナーと新人たちは思わず抱き合い、みんなで泣いて笑って叫んで喜びを分かち合う。チームワークもロイヤリティも最高に高まる、涙と感動の瞬間だ。こうしてトレーナーも新人も一つの壁を乗り越え、一回り大きく成長していく。
 新人の学生アルバイトにとっては厳しい試練だ。だがこの3日間を経ることで目の輝きや態度が確実に変わる。感動に満ちた卒業試験が、この店のレベルの高いQSCオペレーションを支えているともいえるだろう。

毎日1時間、衛生管理の徹底

 サービスに関しては「人時生産性4500円で可能なことをやる」と、白水オーナーの考えは明確だ。わたみん家の場合、概ね5000円に近づくほどサービスは荒くなるし、4000円を切ると利益が出せなくなる。
 この店には最初にお客さまに接する時の基本的な約束事がある。このファーストタッチが重要だ。
1.担当者がお客さまにきちんと挨拶
2.担当者のおすすめメニュー紹介
3.ベルスターとお会計カードの説明
4.飲み放題のプラスセールス
誕生日の特別サービスもある。照明を消した店内にハッピーバースデーのメロディが流れ、花火を点火したパフェがお客さまにプレゼントされる。
 衛生管理の徹底ぶりにも驚かされる。さらに、それを社員が毎日1時間かけてチェックするのだ。これから夏場にかけて念入りに行いたい衛生管理だけに、その一例を紹介しよう。
1.個人の衛生(手洗い、身だしなみ、爪、傷、手荒れ)
2.温度チェック(対象機器類の計測・記録)
3.まな板・包丁・ダスター管理
4.日付シール管理(期限切れ食材の有無)
5.食材保管状況(ラップ・常温保管禁止)
6.フライ油の酸化状況
7.害虫の対策
8.清掃・洗浄状況(調理器具・食器洗浄機・キッチン床・グリストラップ・棚)
徹底した衛生管理で、常にSランクをキープしている店なのだ。

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夢は「わたみん家」20店舗!

 もちろん販促にも力を入れている。満席になるまで、看板を持って呼び込みをする。メニュー説明への反応があれば、呼び込みは100%成功だという。
 また、アルバイトのモチベーションを高めるため、毎月1回1〜2名を対象に、店長の評価と推奨による「社長賞」を決定・表彰。その証のバッジは名札につけられる。
 スポーツやバーベキュー大会、社員旅行、飲み会も定期的に実施。コミュニケーションを強めて従業員満足度を高め続けている、愛情いっぱいの白水社長だ。
 そんな彼が最近ずっと嬉しく思っているのは、不景気にも関わらず予算目標を達成し続けていること。夢は「わたみん家」20店舗の経営だ。白水社長なら可能です。次なる目標も見え始めているでしょう! ガンバレ、「わたみん家」独立組!