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繁盛店の前は、売上低迷店

 東松戸店は茨城店長の着任後3ヶ月目から売上が110%アップと2ケタ成長した。年間では108%、翌年も105%アップと立派な数字をキープ。今年5月の改装後は前年比130%アップを達成。一源の中でもトップクラスの成長を誇る。
 しかし、東松戸店の立地条件は決して理想的なものではない。駅前に位置するものの乗降客は少なく、商圏も狭い。農家や自営業者の多い地域で地元意識が強く、一度トラブルがあると口コミでたちまち評判を下げ、売上が激減してしまう。8年前のグランドオープン時のQSCオペレーションレベルが低かったことから、評判を落としていた。
 これは飲食店ではよくある話。店長の経験も浅く、P/Aの訓練も不十分なまま、大量のチラシを配布してグランドオープンを迎え、店は混乱し、お客様に満足を提供できない。その後遺症が続いて売上が伸び悩むのだ。

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チラシ・クーポン持参で外商活動

 東松戸店の近くに、某大手企業の本社がある。茨城店長の赴任後、外商活動で訪問した際に、女性部長から「オープン時に利用しましたが、料理は遅いしスタッフの方を呼んでも来てくれないし、ひどい店だと思って、それ以来一度も行ってません」と言われた。茨城店長は「経営体制も変わり、オペレーションも安定しました。ぜひご来店ください」と、何度も訪問してお願いし続けた。
 やがて店長の熱意が伝わり、この企業からのお客様が増えはじめ、年末年始のパーティや歓送迎会など、50人規模の宴会が続々と入るようになった。宴会需要の多い居酒屋にとって、外商活動がいかに大切かを教えてくれる好例といえる。
 毎日3時間かけて事業所や商店をコツコツと回るのが、茨城店長の営業方法。名刺にドリンク半額のスタンプを押し、クーポン券付のチラシ(年6回発行)と一緒に配る。投げ込みはせず、1軒1軒新メニューやクーポンの内容を説明して回る。その数は2ヶ月で500〜1000軒。この地道な努力が宴会予約前年比130%アップという成果につながっているのだ。
 今では地域住民の支持も増えた。茨城店長は常連客を300人以上覚えるまでになったという。10人のホール担当P/A全員が、50人以上の常連客を覚え、その情報を互いに共有しているのも、この店の強みだ。全員がお客様にフレンドリーに声をかけることができるのである。
 このシリーズで何度も述べてきたように、売上が伸びている店に共通するのは「常連客が増えた」という点。「上位3割の常連客が売上の75%を作っている」という言葉をお忘れなく。

1万円の重みを受け止め、価値あるサービスを

 東松戸店には素直で積極的なP/Aが多い。チラシも進んで配布してくれたりする。これは、茨城店長が採用時に鋭い目でチェックしているからでもある。
 まずは電話での第一印象(声や言葉遣い)で判断。面接では、ホールの場合は身だしなみや声の大きさや素頭のよさ、キッチンなら清潔感や料理好きかどうかを見る。コミュニケーション能力はどちらの場合も重要だ。
 茨城店長の店舗目標は「商売の原点に戻る!」。「食べる喜びや飲む楽しさをお客様に提供し、明日への活力を養ってもらい、元気になったお客様を笑顔でお見送りする…当たり前のことかもしれませんが、これこそが居酒屋の原点であり、決して忘れてはならないことです」と語る。

 オペレーションの重要ポイントは次の通り。
1.常においしい料理とお酒を提供
@適正なスタンバイによる早い提供
A定位置管理の徹底(ムダ・ムラ・ムリの排除)
B計量の徹底による品質の安定(スタンダードの維持)
Cファーストドリンク2分以内提供
2.常にお客様の立場に立って行動「卓割制の導入」
@担当テーブル(自分のお客様)を意識、ラウンドの徹底
A入口への意識向上→来店から5秒以内のご案内
B清掃計画の完全実施(輝くお店の維持)
3.常に向上心を持ってより良い仕事を目指す @業務終了後「本日の行動」の検証と改善
Aお客様の要望・情報を、連絡ノートを活用して全員で共有
B決めたこと・約束したことを守り、明るく楽しい店づくり

 茨城店長は日頃からP/Aにこんな話をしている。「たとえば4人家族が来店したとしよう。親御さんの年齢は20代。月収は手取り20万円ぐらいだろう。1人2500円の食事なら4人で1万円。20万円のうちの1万円は大きい。その重みをしっかりと受け止めて、価値ある料理と最高のサービスを心がけよう。もし不備があったら、月に1回、あるいは3ヶ月に1回の大切な家族のひとときが台無しになってしまうんだ。家族みんなが心待ちにする幸せな時間をお届けしよう」と。すばらしい!
店長のこのような強い想いが、安定した良いオペレーションへとつながっていくのだ。

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P/Aの成長に感謝の日々

 この店では毎月1回、P/Aの80%以上が参加して全体ミーティングを実施。ちなみに私はよく講演先やクライアント先のセミナーで全体ミーティングの実施状況を尋ねるが、実施しているのはまだ1〜2割程度だ。
 全体ミーティングを行うことでチームワークがよくなったり、店長の想いが伝わったり、徹底力が向上したりする効果がある。あなたの店でもぜひ実施を!

★今月のアドバイス「全体ミーティングの内容」
@今月のミーティングテーマ発表
A店長の言葉(最近感じていること、仕事に懸ける想いなど)
B来月の具体的行動目標
C新商品や新キャンペーン紹介
D今月の新人紹介
E今月のベストアルバイト賞表彰
F全員でディスカッション
テーマ例「顧客満足度を向上させるためには」

 今年の3月、茨城店長は家庭の事情で1週間仕事を休むことになった。連日大型の宴会予約が入っていたため、上司に応援を要請しようとしたところ、P/Aリーダーから「私たちが店を回すので大丈夫です!」と言われた。その言葉通り、宴会の入っていた2日間で110万円を売り上げ、しかもオペレーションもスムーズだったという。部下の成長に驚き、その活躍に心から感謝したそうだ。
 また、あるアルバイトの仕事ぶりが問題になったことがあり、店長が注意しようとしたのだが、アルバイトリーダーが「私が解決します」と申し出て、実際にそのアルバイトと話し合い、解決したのだ。「彼らが日々成長してくれるのがうれしい」と、目を細める店長である。
 新人が腕を上げたら必ずほめ、目標の売上を達成したら「みんなのおかげだよ」と感謝の気持ちを常に言葉にする。そんなあたたかい店長なのだ。
 最近一番うれしかったのは、リニューアルオープンの日、以前勤めていた柴又店の常連客が花束を携え、家族そろってお祝いに駆けつけてくれたことだという。店長冥利に尽きますね!
 これからもますます地域に愛されるお店づくりを続けてください。ありがとう、茨城店長!