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リピーター率50%以上!

 オープン当初(1年前)の月商は880万円。当初はチラシでの呼び込みも実施。年末には200万円を売り上げ、現在も平均月商1100万円と、好調をキープしている。店舗面積は29坪。坪売上は38万円に上る超繁盛店なのだ。
 この店のリピーター率は現在50%以上。新規客の常連化はAPカンパニーの中でもトップクラスだ。売上の上昇は、このリピーター率の高さにある。
 50%のリピーター率は、飲食店では非常に高い数字である。顧客管理を担当している某企業のデータによると、1回きりのお客様は70%、累計2回以上のお客様は30%だという。(参考文献/「1回きりのお客様」を「100回客」に育てなさい!高田靖久・著 同文館出版)
 最近、徒歩2分の近場に塚田農場の京王渋谷西口店がオープンしたが、渋谷道玄坂下店の売上前年比は110%と伸びている。週末は行列ができるほどの繁盛ぶりで、以前はやむなく一部のお客様をお断りしていたが、最近では満席になると京王渋谷西口店のほうへご案内している。

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店長方針は「従業員感動満足」

 「お客様の満足」を高めるのは従業員にしっかりやってもらい、店長である自分は「従業員の感動と満足」を高めることに徹すると、井野店長は言う。
 いつもP/Aに気を配り、全員に声をかけたりランチ面談を行うなど、コミュニケーションをとても大事にしている。また、常にスタッフが楽しく働けるよう工夫している。
 たとえば全体ミーティングなどで、お客様に喜ばれるちょっとしたアイデアをみんなで考える。自分の案が採用され、全員で実行し、実際にお客様の喜ぶ顔を見ると、仕事に対して自信と誇りが持てるようになるのだ。
 その例を一部ご紹介しよう。
@じとっこ炭火焼をまずは通常のゆず胡椒で味わっていただき、途中でハートマークの「完熟ゆず胡椒」をお出しして、2つの美味しさを楽しんでいただく。
Aキャベツときゅうりのお通しに、小さなタッパーに入れた、お持ち帰り可能な「秘伝のみそ」を添える。「次回タッパーをご持参いただけたら満タンにします」との一言も忘れない。
Bさつまいものフライは塩味がついているが、冷めたら生クリームや黒蜜をお出しし、新しい味で楽しんでいただく。
 こういった気の利いたサービスがお客様に大好評だ。自分たちで考えたことを実行するためスタッフみんなが積極的で、お客様との会話も自然に増える。ますます仕事が楽しくなって、笑顔で働けるようになるのだ。店長は適切なアドバイスやサポートをしていく。
 お店のブログもスタッフが作成していて、常連客とのやりとりも多い。店長の指示ではなく、スタッフ自ら考えて実行する自立型P/Aの時代を、率先して歩んでいるお店だ。

「明日につながるノート」

 1年前のグランドオープン時には、400人面接して25人採用した。わずか6%の狭き門だ。最近の募集でも、1〜2割程度の厳しい採用率だという。
 教育の際にはまず目的を教える。なぜそうするのか理解した上で行動する必要があるからだ。特に商品提供トークは徹底教育する。商品知識を磨くのは、おいしい料理をよりおいしくお客様に味わっていただくためだ。
 塚田農場のメニューブックは雑誌風で、生産者も登場する。読むのが楽しくて、ためになる。メニューを楽しく読むお客様に、「宮崎で営んでいる養鶏場で育てた新鮮なお肉なので、レアでも召し上がれます。お味はついていますが、ぜひこちらのゆず胡椒でご賞味ください」と、プラスαのトークをするのである。
 問題点の改善や新しい目標を掲げる上で大きな役割を果たしているのが「明日につながるノート」である。これはP/A全員と店長が記入するノート。左ページには気づきや反省点、改善アイデアなどを記入し、右ページには今日うれしかったことやお客様からのおほめの言葉、スタッフ同士の感謝の気持ちなどを記入する、感動共有ノートだ。ここに書かれたことは毎日の朝礼で確認され、みんなのやる気を促して、ますますチームワークを向上させている。まさに“明日につながる”優れたノートといえる。(いいですね!)

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課長 鳥耕作カードで常連客がいっぱい!

 「鳥耕作カード」は人気漫画にヒントを得た、名刺スタイルのカード。初来店で主任、2回目で課長となり、課長カードに5回押印されると部長…というように、来店頻度によって昇進していくユニークな販促手法だ。昇進のたびにお祝いのカードとボーナスが出る(メニュー1品サービス)。社長や会長になると豪華なプレゼントまで贈られるという、面白い仕組みである。しかもこれはQRコードで管理する顧客管理カードであり、機能面でもすぐれものなのだ。
 このカードがスタートしてまだ1ヶ月だが、15回の来店で、早くも専務に昇進したお客様がいる。(すごいですね!)
 来店時にこのカードを提示していただくだけで、スタッフにはお客様の来店頻度がわかる。自然に感謝の気持ちが湧き上がるし、会話にも弾みがつく。
 このほか、親しくなったお客様に渡す「塚ちゃんシール」(携帯などに貼る電話番号入りのシール)も常連客の話題。本当にロイヤルカスタマーづくりに強いお店なのだ。

 井野店長はまだ2年目の店長ながら、すでに300人以上のお客様の顔を覚えていて、どの席でどんな会話をしたかまで記憶しているという。お客様の声も覚え、電話予約の際には「先日はご来店ありがとうございました」などと対応して、お客様に喜ばれているそうだ。
 取材を通して、お客様との絆が固い店であることや、リピーターになっていただきたいという店長の強い想いがひしひしと伝わってきた。
 最近の一番うれしいできごとを伺った。1周年記念の日、常連客の予約でいっぱいになり、貸し切り状態に。お客様から花や人形などをたくさんプレゼントされ、とても感激したとのこと。1年前はチラシを配って必死で呼び込みをしたが、今では予約なしでは入れないほどの超繁盛店になったのだ。
 井野店長は東京農大出身。これからのビジョンを伺うと、社内で市民農園の仕事に携わるポジションにつきたいと、明日につながる夢を語ってくれた。
 お客様と笑顔で親しく会話することの大切さを教えてくれたお店だった。ありがとう、井野店長!