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売上2ケタ成長、3つのポイント

 「最初、今回の取材はお断りしようと思いました」…これが岡本店長の冒頭の言葉だった。多くの店長を取材してきたが、そう言われたのは初めてだ。理由は、新宿東口店に異動してまだ数ヶ月で、何も結果を出していないからだという。謙虚で真摯な姿勢は、好感度大だ。
 だが実のところ彼は、社内屈指の店を次々と任され、売上前年比はいずれの店舗でも110〜118%アップ、売上伸び率・ミステリーショッパー・衛生監査のトータルで全店ナンバー1獲得という実績を持つ、すご腕の実力店長なのだ。
 売上を伸ばし続けてきた主なポイントは、次の3つ。
1.チームワークの醸成
 最も大きなポイントがこのチームワーク。みんなの力で店の空気感を高めることが狙いだ。笑顔での対話やコミュニケーションの充実を図るのはもちろん、一人ひとりの成長を考えながら連携を深めていくのが岡本流。
 たとえば、学生アルバイトに将来の目標(職業)を尋ね、それを実現させるにはどんな問題を解決すべきか、つまり、将来のために今この店で何ができるかを自分で考えて実践するようアドバイスして、彼らの成長を後押しする。飲食店での仕事の経験は、どんな職業にも通用するという誇りを持っているからだ。
 岡本店長はこうやって全員のレベルを上げつつ、より優れたチームワークを目指している。「自分の分身(店長レベルの優秀なスタッフ)をどれだけ育てられるかがカギですね」と語る、実にEQの高い店長だ。
2.常連客づくり
 基本は常連客の顔と名前を覚えること。この店ではアルバイトスタッフでも30〜50人のお客様を覚えている。常連客のコースターには毎回テーマを変えてお礼のメッセージを記入するといった、ユニークな試みをしているが、お客様からも「いつもありがとう」などのメッセージが返ってくるという。
3.季節・天候に配慮した販売促進
 季節や天候に合わせて飲み放題やマグロ解体ショー、鍋の食べ放題などを実施。ファサードの伝言板にイベント情報や店長の本日のおすすめを毎日記入して、タイムリーに宣伝している。
 店長の裁量権が大きいため、自由な発想で独自の販促が可能。岡本店長は赤坂見附店時代に飲み放題980円を実施し、低迷していた土・日の売上を2倍にアップさせた実績を持つ。

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凡事徹底の教育体制

 岡本店長の店舗方針は「凡事徹底」。毎日の小さな当たり前の作業を怠らず、QSCを極めていく方針だ。もちろんスタッフにもこの姿勢が求められる。
 採用率は2〜3割と厳しく、採用のポイントは以下の3つ。
@第一印象
A礼儀正しさと良識(健全な判断力)
Bスキル(経歴)
特にキッチンは居酒屋経験者を優先的に採用。教育費用を抑えるためだ。今後は他店のスカウトも実施していく方針だという。
 店長は最近、モラルの低いアルバイト個人と動機付け面談を実施したが期待した結果が得られず、本人の判断で店を辞めることになってしまった。同じ大学の10人グループの中心人物だったので、他のメンバーへの影響が懸念されたものの、やむなしと考えて実行した。結局他のメンバーも追随して辞めてしまったが、店を良い方向に変革させるには不可欠なことだったそうだ。勇気ある決断だと私も思う。
 新人教育で重点を置いているのは、商品知識の徹底。知識が不十分だと自信が持てず、お客様と積極的に話せないからだ。この店ではお客様との会話をたいへん重視し、会話のきっかけづくりを次のように「仕組み」として定着させている。
 お客様が来店して1時間経過したら、おしぼり交換に行く。そこで店名「椀(わん)」の由来を説明し、日替わりお味噌汁をサジェスト。お客様に喜ばれると、さらに会話が弾む。こうして会話のレベルを一つずつ上げていくのだ。
 店長作成の基本オペレーションマニュアル(商品知識・接客用語・作業)とスキルアップマニュアル(スピード重視・ハンディの技術・気配り事例)も、教育ツールとして活用されている。

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自燃性の人づくり

 ごく普通のアルバイト学生が、岡本店長の影響を受けて頑張り、アルバイトリーダーとして活躍した後、ついに入社した。
 店長が常に気にかけてほめ、君がいかに重要な存在かを伝え続けるうちにどんどん新たな仕事を覚えて、レベルアップしていったそうだ。部下の「重要感」を満たすのは上司の役割であり、その最も効果的な方法は、相手に感謝し、ほめることである。
 そのスタッフが大きく伸びる直接の契機となったのは、「自燃性・他燃性・不燃性」に関する店長の話だったという。
●自燃性の人:自ら燃えて積極的に物事に取り組み、周囲にエネルギーを分け与える人
●他燃性の人:燃えている人に触発されて燃え上がる人
●不燃性の人:周囲からエネルギーを与えられても燃えない人
 このスタッフは「自燃性の人」を目指して奮起し、自己実現していったのだ。

ナンバー1店長のコミュニケーション方法

 「わん」の中でもトップクラスの岡本店長がいつも実施している「コミュニケーションの取り方」をご紹介しよう。
@いつも笑顔で挨拶する(ワンスマイル、ワンメッセージ)
A毎日全員に話しかける
BP/Aの長所を見つけて常にほめる
C叱った後はきちんとフォローする
DP/A全員に関心を持つ
Eポジティブな言葉を発信する
FP/A全員に店長の今日の具体的行動目標を知らせる
G感謝の気持ちを言葉にする 
 岡本店長はまた、P/Aには業務計画表(チェックリスト)を用いて時給との連動を図り、社員に対してはPDCAのマネジメントサイクルを早める教育を行っている。(さすがですね)

 最後に、うれしいエピソードを伺った。錦糸町店時代、半年以上にわたってコースターメッセージのやり取りをしていた常連のカップル客が、錦糸町店最後の日、花束を抱えて見送りに来てくれたという。「3人で記念撮影しました。ホント、うれしかったですね」とニッコリ。
 岡本店長と話しているうち、オーイズミフーズ全体の総責任者として活躍する20年後の彼の姿が目に浮かんできた。人間的魅力あふれる実力店長だった。今後の活躍に期待します!