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採用基準は「信頼関係を築けそうか」

 学生時代に飲食チェーンでアルバイトをしていたという清家店長。卒業後、物語コーポレーションに入社し、2年目で店長に昇格、赤字店を黒字化させた。その後、月商2000万円の西宮港店を任され、全員入社半年未満という部下社員を統率しつつ繁忙店を切り盛りする、スーパーな腕を披露。
 FCオープンスペシャリストとして5店舗のオープンに携わり、各企業のオーナーから厚い信頼を得たのみならず、直営店3店舗のグランドオープンも経験。「新店舗は清家に任せよ!」と会社から頼りにされている、超たのもしい実力店長である。
 駒沢公園店はオープン1カ月(取材時)ながら、QSCオペレーションは非常に安定している。売上も1800万円(平日40万、土日120万)と好調だ。
 営業方針は「自分らしい店をつくること。P/Aの個性を活かすこと」だという。たとえば、きれい好きの人にはクレンリネスの意識を高めてもらい、徹底的に店を磨いてもらう。明るく活発な人には案内や接客のトレーナーとして活躍してもらう。料理好きな人にはキッチンを任せる。それぞれの強みを引き出して仕事を任せ、店長が励ましながら支えていく。これが清家流マネジメントだ。
 オープン前のP/A募集では、100名面接して50名採用。通常は3割程度の採用率だが、この時は優秀な人材が多かったという。採用基準は次の通り。
①相手の目を見て話せるか?
②一緒に楽しく働ける雰囲気をもっているか?
③信頼関係を築けそうか?
①は第一印象や素頭の良さ、②は人柄や魅力やコミュニケーション力を見る。そして③は、この人がミスをしたりトラブルに陥った時、店長として責任を取るのが当然と思えるほど、確かな絆を築けそうかどうかを判断。簡単な判断ではないが、実はこれこそが最も基本的な最低基準だと清家店長は言う。

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5段階のマスターライセンス制度

 グランドオープン前には、4時間×8日=32時間かけて新人教育を行う。主な内容は、①ご案内 ②料理提供・ドリンカー ③ハンディ操作・デシャップ ④バッシング ⑤レジ操作など。さらに、「自分の伝えたいことを100%正確にお客様に伝える」という接客の基本を学ぶ。
 社員は主任→副店長→店長へと昇格。それぞれのポジションごとに管理責任を担う。主任はホールとキッチンのオペレーションに精通。副店長はP/Aの教育担当と数値管理。店長は社員教育と緊急時対応である。
 また、物語コーポレーションには「マスターライセンス」というランクアップ制度がある。ステップ1~5は以下の通り。
1:企業理念の教育、ハウスルールの徹底
2:オペレーション(ホール・キッチン)の基本レベル修得
3:トレーナーとして教育できるレベル修得
4:時間帯責任者
5:店長代行
 上記のように5段階のレベルが明確。早い段階でトレーナーレベルのP/Aを養成しているのも特徴的だ。

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スタッフとの距離感が近い店長

 学生時代の清家店長は、かなりの人見知りだったという。だが飲食企業に就職した以上、そのままでは商売に差し障る。店の扉に手をかけた瞬間からP/A一人ひとりに積極的に話しかけようと心に決め、ずっと努力してきたそうだ。
 今でも社員やP/A全員に話しかけている。よく話すのは自分の失敗談。弱みを明るく堂々と語ることで、スタッフとの距離が縮まって親しみやすさが増すし、悩んでいる人へのアドバイスにもつながる。
 清家店長は相手の反応が悪くてもきちんと話す。「相手が離れていっても、追いかけて話します」と言う。(すばらしい!なかなかできないことです!)全員の出勤時間を常時把握し、その時間に出迎えて、ワンスマイル・ワンメッセージを届けているそうだ。
 声をかける、ほめる、相手に常に関心を持つ。それを繰り返すことで、普通のP/Aにある日スイッチが入って急速に伸びたり、キッチンを任すことができるまでに成長したりするのだ。
 清家店長の「ほめる」と「叱る」のバランスは9:1。ただし、ミスが起こる前に諭すし、ダメなことに対してはNOと言う。叱る一歩手前で止めるのが大切だと考えているからだ。
 ふだんはざっくばらんな大阪弁で、とても親しみやすい清家店長。この距離感の近さが、スムーズな店舗運営をもたらしているのだ。だが、大切なことを伝える時やいつもと違う指示をする時は、P/Aを自分のところへ呼んで真面目な表情でビシッと語る。このようなめりはりのある姿勢が重要である。

オープン店長の使命

 多くのグランドオープンを経験している清家店長。特に配慮している事柄をお聞きした。オープンを手がける店長のみなさんは、ぜひ参考に。
①スタンダード通りの店づくり
オペレーションやマニュアルは店によって変わっていくことがある。スタンダード(基準)を守り正確に運営することが重要。
②新しい店を構築
新タイプの店、立地が違う店、設備条件が異なる店など、新たな仕組みを作って稼働させることで、スムーズに構築していく。
③社員教育を徹底
新入社員や1~2年目の社員でもP/Aをきちんと教育できるように指導する。
④店の文化を創造
企業に文化や社風があるように、店にも優れた店の風土が必要。次の店長へとすみやかに引き継げるような、独自の誇れる文化をもった店づくりをする。

 最後に、これからの夢を伺った。「評価される人(部下社員)をどんどん育てたいですね。本社が強い人財を必要とする時、真っ先に名前の挙がるような社員になってほしいんです。私がバックアップします」(さすがオープニング実力店長!)
 次の店に異動する際、いつもP/Aたちから「なんで異動するんですか?ずっとこの店にいてください!」と言われる清家店長。兄貴みたいな、部活のキャプテンみたいでもある店長だ。
 入社10年。「優れた会社に入って本当によかった。自分らしく自由に仕事でき、人間的に成長させてもらいました」としみじみ語る。自分の物語を創ってきたわけだ。さらに綴っていけば、それは会社の物語へと広がっていく。頑張れ、清家店長!