
|
感動のワインサービス |
加古オーナー店長の営業方針は「記憶に残る商品と、記憶に残るサービスを目指す」である。この方針が貫かれた、最近のエピソードを紹介しよう。
常連のお客様が先日亡くなった。愛知万博にも書を提供していた書道の先生で、85歳のご高齢だった。東京で仕事中に倒れ、新聞にも訃報が掲載されたとのこと。お弟子さんたちはノンナ・カコーレでお別れ会を開いた。
スタッフは、先生の好きだった赤ワインを人数分より一つ多く提供した。これは、お別れ会の主役である先生の分。この日、店長は他店の応援のため不在で、スタッフが自ら考えて用意したのである。お弟子さんたちはその心配りにいたく感激し、後日店長の前で目を潤ませながらこう語った。「先日は先生の分までワインを出してくださって本当にありがとう。このお店ではすばらしい教育をしているね!」
それをお客様の口から初めて聞いた店長は驚きと感動で胸がいっぱいになり、お客様の前で泣いてしまったそうだ。この話を聞いた私まで胸が熱くなった。お客様を想う気持ちが、こんな素敵なサービスを生み出すのだ。
|

|
売上V字回復の秘訣 |
2年連続2ケタ成長の秘訣を伺ったところ、加古店長の答えは「当たり前のことをやっただけです」と、いたって謙虚。そのポイントをまとめてみた。 |

|
1.記憶に残る商品づくり |
まずは、温かい料理を早く提供するという“当たり前のこと”を徹底。さらにボリュームの多さやユニークさなど、記憶に残る商品を追求している。
ごちそうランチ(1380円)は、@太陽の恵みの野菜スープ、A地元の野菜を使ったたっぷりサラダ、Bパスタまたはピッツァ、C自家製シャーベット、Dドリンクバーと、ボリューム満点。
ピッツァはビッグサイズで具材の量も多く、イタリアンにしては惜しみなく材料費をかけている。新鮮なサラダをお客様の前で作っているのも、ライブ感があっていい。「地元農家さんの愛情をたっぷりと受けて育った野菜が食べられるレストラン」というのがノンナ・カコーレのコンセプトだけに、特に野菜には強いこだわりが感じられる。ここは野菜ソムリエ教会の認定店として、東海地区で初めて認められた店でもある。
キッチンのメンバーはマルゲリータなどのクラシックな商品にこだわるが、ホールのメンバーはお客様の声を受けて思い切った商品を考えるという。「普通ではダメ。たとえ邪道でも、記憶に残る商品を作れ」と、加古店長は指導している。
|
2.活気ある挨拶とクレンリネスの徹底 |
挨拶がきちんとできる、掃除が行き届いている。これも当たり前のことであり、加古店長は徹底して言い続け、やり続けてきた。だが3年前はこれが不十分だった。店の空気も悪く、辞めていった社員もいる。でも店長の年齢がP/Aたちと近かったことから、彼らは店長を兄貴のように慕い、協力してくれた。
加古店長は、若い人はどんどん変われるし成長できると思っている。この店でのアルバイトを通して社会人になるための勉強をし、大きく成長してほしいと願っているのだ。
元気な声で挨拶をし、お客様のことを覚えて会話を多くする人がいる。自主的に清掃スケジュールを決めて、一生懸命店を磨き上げる人もいる。やる気を競い合ってさらに成長していく人たちを、店長は応援している。
|
3.スーパーアルバイトの養成 |
ノンナ・カコーレには2人のスーパーアルバイトがいる。2人とも名刺を持っていて、時給も高い。1人は広報担当で、メッセージボードや新メニューのPOP作成、イベント企画などを行う。もう一人はP/A教育とお客様担当。100人以上の常連客と親しく会話ができる。指名の予約も入るし、お客様からいただくお礼の手紙も多い。名前で呼べるお客様の数は社員よりも多いという。この2人が他のP/Aに刺激を与え、全員の成長をリードしているのだ。
|
4.バースデー・定年退職パーティ定着 |
地元に密着した店だけに、地域のお客様のパーティや二次会が多く、V字回復の要因の一つとなっている。
バースデーは、ケーキを出すプチバースデーからサプライズのコンサートまで、月に50組以上予約が入る。そして最近増えているのが、定年退職祝いや異動・昇進祝いなどのパーティだ。定年退職の場合、大きなケーキの入刀で盛り上がる。パーティの翌日、制服姿でお礼を言いにくるお客様もいる。定年パーティは奥様にとても喜ばれるそうだ。(いい仕事ですね!)
|
5.メール配信で常連客づくり |
大量の折込チラシによる販促には一定の効果があった。だがそれ以上に効果的なのは、メール会員へのメッセージだと加古店長。週2〜3回のペースで配信している。
「蕎麦の種まきのお手伝いをしてきました。今度パスタに蕎麦を入れようと思っています」という季節の便りから、「台風の片付けが終わったら食事に来て下さい。台風割引15%OFF」というお知らせまで、顧客との距離感が近い内容だ。台風割引の際は平日に10万円も売上がアップしたそうだ。
|
6.社員の売上・利益意識向上 |
この店では予算の達成に対する賞与連動制をとっている(年3回支給)。もちろんP/Aにも配分される。「成果が出たら賞与が変わる。これも当たり前のことですよね」と加古店長。
原材料も決してムダにせず、どれだけ売上を伸ばせるかを常に考え、その姿勢をスタッフに示している。社員7名が財産だと語り、社員旅行では横浜のイタリアンを視察して、全員で意識を高め続けている。27歳の若さでこの経営感覚はすばらしい!
この店の改革に着手して2年目の12月30日、常連のお客様からこう言われた。「今年は本当にいい年だったね。以前は平日の夜は空席が目立ってたけど、今では待つお客さんも出るほどになったね。料理もおいしくなったし、スタッフも大きな声が出るようになった。この1年でこのお店はすっかり変わった。すばらしいよ。なぜこんなに変わったのか教えてほしい」と。
店長はこの言葉を聞いて、うれし涙が止まらなかったという。
加古店長の夢は、付加価値の高い野菜や果物を自らの手で作って店で使うこと。記憶に残る野菜を作って料理する、“農業するレストラン”の運営だ。「大手チェーンに勝てる、個性豊かなレストランを目指します」と、目を輝かせながら語る。
この若さでこれだけのパワーと熱意をもつフードビジネスマンには、滅多にお目にかかれない。頑張れ、加古青年社長!
|