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売上110%の伸張、その理由

 正治店長はアパレル業界からの転職組である。現在の清須店に異動してからまだ日が浅いが、その前の一宮千秋店での手腕は誰もが認めるところだ。一宮千秋店は立地の悪さも手伝って厳しい売上状態が続いていたが、それを前年比110%アップにまで高め、社内でもトップクラスの店に変えたのである。売上伸張の要因は次の通り。
@提供時間の短縮
 正治店長が一宮千秋店に異動した当初は、提供までに時間がかかりすぎていた。そこでランチタイム(ピーク時)の人員を1名増員、さらにホールでもキッチンでも幅広く作業のできるP/Aを増やした(多能工化)。その結果、提供時間を12分から8分以内(一刻魁堂が掲げる標準時間)へと短縮させたのだ。
A常連客づくり
 売上を伸ばすには常連客を増やす必要がある。ディナー時には店長自らホールに出て「今日もありがとうございます」「いつもの台湾ら〜めんですね」などと、お客様全員に一言ずつ声をかけた。座る席が決まっていれば、そこへご案内もした。
 P/Aとのコミュニケーションを図りつつ、店長が率先して接客教育をしていくうち、P/Aのサービスレベルは徐々に向上し、客数が増えていった。それに伴ってP/Aのやる気も高まり、自然に意識改革が進んでいったという。(すばらしい!)
 消防団への働きかけや小・中学生の体験学習受け入れなど、地域のお客様に親しまれる活動にも力を注いだ。クーポン券も積極的に配布。ちなみに一刻魁堂では月2回の新聞広告を行い、クーポンを掲載している。お客様の反応はよく、回収率は高い。
Bクレンリネスの徹底
 店を活性化させる基本は、クレンリネスの徹底。身だしなみを整えたり、キッチン設備やホールのガラスの磨き込み、トイレ清掃など、毎日少しずつコツコツときれいにしていった。特にテーブルに着いた時のお客様の目線でクレンリネスを検証。「この汚れをどう思う?」などと質問を投げかけて、P/Aの自発的な行動を促した。

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人時売上高・顧客満足度・P/Aトレーニングを同時達成

 店長方針は「基本の徹底」。あいさつの励行やハウスルールの遵守には厳しい。言葉遣いや礼儀礼節を重んじる世代でもあり、口うるさく思われるほど徹底指導しているのは、それが大切なことだと知っているからだ。学生時代にアルバイトをしていた人が社会に出た後、「店長に厳しく言われたことが、社会人になってやっとわかりました」と報告に来てくれるケースも多い。
 人時売上高を上げるため、正治店長はきめ細かいワークスケジュールづくりを行う。時間当たりの客数予測をし、それに基づいてキッチンとホールの標準人員を配置する。特にピークタイムは標準人員が重要。キッチンは作業割当を明確にし、ホールはステーション制で効率をアップさせる。効率が上がればお役様の満足度も上がる。これは実践を通してのトレーニングでもあり、P/A一人ひとりのスキルアップにもつながっていく。
 一刻魁堂にはWキッチンという仕組みがある。ゆで麺機が2台設置され、伝票が5枚になったらWキッチン(2台稼働)に切り替え、提供時間を早めるのだ。清須店では、土・日のピークタイムには1時間に130人の来客がある。これを適切な作業割当とWキッチンによって、集中的かつ能率的にさばいている。
 このように、人時売上高・顧客満足度を上げつつ、P/Aトレーニングを同時に行うことが重要なのだ。

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最後の夜のサプライズ

 正治店長の一宮千秋店から清須店への異動は、急に決まった。異動の3日前に辞令が出たのだ。一宮千秋店のP/Aたちは、あまりにも急なできごとに呆然とした。それにもかかわらず、店長への感謝の気持ちを込めて、次々と素敵なサプライズを繰り広げてくれたのである。
 あるアルバイトは、大きなケーキを持って駆けつけた。みんなで記念撮影もした。しかも全員が店長に手紙を書いてくれた。どの手紙にも「社会人として大切なことをたくさん教えていただき、ありがとうございました」「店長から言われたことは今後も直していきます」等々、胸に沁みる言葉が綴られていた。
 そして深夜には、特に目立つタイプではない普通の学生アルバイトの一人が、ビールを持ってやってきた。「店長、今まで本当にありがとうございました」と、泣きながらビールを手渡されると、さすがのベテラン店長もぐっときて、思わず涙をほろりとこぼしてしまった。
 自分が採用して一生懸命育ててきた、まさに自分の子どものようなアルバイトたちばかり。主婦パートさんからも、心のこもった手紙やプレゼントをいただいた。みんなみんな、大切な子どもたちであり、仲間たちだった。自分はこんなにも信頼されていたんだ。自分の言葉や気持ちが、ちゃんとみんなに伝わっていたんだ。この仕事に携わって本当によかったと、心の底から思った瞬間だった。
 感動した店長が自宅で家族に手紙を見せたところ、全員「すごいね!」と大喜び。小学校6年生の次男は「お父さんみたいな店長になりたい」と言ってくれたそうだ。(うれしいですね!)

スタンドミーティングでコミュニケーション

 P/Aからこのような手紙をもらえるのは、日頃からコミュニケーションがしっかり図られているからである。正治店長は、仕事中や休憩室でのちょっとした会話をとても大事にしている。ひんぱんに自分から声をかけ、困りごとを聞いたり悩み相談に応じたりしている。
 正治店長の話を参考に、以下、コミュニケーションのポイントをまとめてみた。
@1日1回、必ず全員に声がけ。
A新人P/Aとの十分なコミュニケーションを図り、入店1週間は毎日面談。
B毎日、朝礼や終礼で情報交換や意見交換。
CP/A全員に、店長方針や今月の目標をしっかり伝達。
Dいつも笑顔で挨拶。(ワンスマイル・ワンメッセージ)
E問題を抱えているP/Aがいたら、必ず相談にのる。
F仕事上の良かった点を、その時その場でほめる。
Gホール・キッチン・マネジメントチームのミーティング実施。
HP/Aとの約束を確実に遵守。
I連絡ノートや感動共有ノート、メール等で、情報を共有。

 店長には店舗運営に関する知識・技術が必要だが、それ以上に大切なのは店長としての姿勢や方針、P/Aへの愛情と接し方、スムーズな人間関係やチームワークの構築である。それらのすばらしさをあらためて教えてくれた、ベテラン店長だった。
 ありがとう、正治店長。お父さんのような懐の深い店長として、これからもますます熱く長く頑張ってください!