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過去最高売上記録達成と、1000万円の利益改善

 大崎店は5年前にオフィス街にオープンした。客層の8割が男性。土日の売上は非常に厳しく、赤字が続いて、2年前には閉店の危機にあった。
 そこに異動してきたのが伊藤店長。不振の続くこの店で、11月は105.6%、12月103.3%、1月106.5%、2月114.0%,3月138.4%と着実に売上を伸ばして、年間売上過去最高を達成し、1000万円の利益改善も果たしたのだ。
 この驚異的なサクセスポイントについて、伊藤店長に伺った。

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@ランチ客数135%アップ

 最初に取り組んだのが、提供時間の短縮だ。パスタは茹で上げを出すため時短は容易ではないが、ピークの提供時間最大20分を15分にまで改善した。
 次に、最終バッシングがほとんどない状態を目指して中間バッシングを徹底させ、効率よく回転できるようにした。
 また、12時までに満席率が7〜8割になるよう、入口で呼び込みを開始。店長自ら毎日「パスタサイズがLLでも同価格ですよ!」と呼び込みを続けた。全社挙げての成功事例発表会ではスタッフの一人に「自然に満席になるランチタイムになぜ呼び込みするんですか?」と質問され、彼はこう答えた。「混雑を避けたいお客様を12時前にお迎えし12時30分までに食事を終えていただけば、少し遅めのお客様を12時40分からお迎えできます。これで2回転が可能になり、ゆったり食事できてお客様も満足される。満足度が上がればディナー利用も増えます」
 この店ではこうして「ランチタイム2回転大作戦」を全員で実施し、売上135%アップという数字を実現させたのだ。
 もちろん、パスタソースの味見徹底を図るなど、品質へのこだわりも強化。さらに、500円のワンコイン弁当の販売個数を増やせるようになったことも、売上アップに貢献している。

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A人件費の削減

 異動して数カ月の時点で、赤字打開のため社員2名体制を1名に削減し、パート・アルバイトの戦力化に集中した。また、平日に対し売上が半減する土日は、思い切って最小人数のスタッフで営業することを決断。ホール・キッチンともに5名体制から3名に減らした。これにより、トータルの人件費を32%から29%に削減した。

Bチームワークの醸成

 伊藤店長が異動後すみやかに行ったのは、スタッフ全員との面談だ。自分のやり方を通すのではなく、スタッフの気持ちを確認しながらコミュニケーションを図っていった。「この店ではどんなやり方をしてる?」「どんなお客様が多い?」「仕事は楽しい?」「どんな飲食店が好き?」などの質問を通じて、店長が作り上げたいと思う店との共通点や違いを認識し、調整していった。スタッフの話を聞くことを大切にしている店長なのだ。
 伊藤店長の営業方針は「“活気”と“とびっきりの笑顔”の店」。最高のチームワークでそれを成し遂げたいと考えている。彼は日頃からスタッフに声がけし、趣味や家族や学生生活のことまで相談に乗っている。みんなの兄貴的存在なのだ。もちろん朝礼・連絡ノート・全体ミーティングなども欠かさず実施している。
 前述の成功事例発表会で、スタッフが次のようにコメントしている。「伊藤店長は、忙しくなればなるほど楽しそうに見えます。どんな状況になっても、笑顔は変わりません。いつでも手際よく、とびっきりの笑顔でお客様に接する店長の姿は、最高のお手本です」
 「忙しさを笑顔で楽しむのがモットー」と語る伊藤店長。店長の笑顔はチームワークの醸成にも不可欠なのだ。

店長が感極まった二つの体験

 伊藤店長の心に残るできごとを二つ紹介しよう。
 一つは溝の口店に勤務していた時の話。常連客だった俳句教室の先生が、10人の生徒さんと一緒に月1回来店していた。店長も徐々に皆さんと親しくなり、来店を心待ちするようになった。
 ある日、会計の際に先生から突然「来月からもう来られません。これまで良くしていただいてありがとう」と言われ、驚いてしまった。その言葉と同時に、生徒さんたちが全員泣き出したのだ。聞けば、多くの方がご高齢で、足が弱って教室に通えない人も出てきたため、やむなく教室を閉めるとのこと。その日が最後の授業であり、最後の会食だったのだ。今日で皆さんとお別れかと思ったとたん、店長の胸にも熱いものがこみ上げてきた。こんな「人生の節目」にも遭遇する仕事なのだ。
 もう一つは、成功事例発表会で3人のスタッフと一緒に壇上に上がった時のことだ。彼らは1年間の成果発表を、社会人として大切なことや人間関係の築き方、働く楽しさを伊藤店長から学んだことに対する、次のような感謝の言葉で結んだ。
 「伊藤店長に言われた、忘れられない言葉があります。『気持ちの持ち方によって、同じことをやっても結果が違ってくる。どうせやるなら何事も前向きに積極的に。そのほうが楽しいし成長もできる』…目標もないまま何となくアルバイトしていた私ですが、これをきっかけに気持ちを切り替えて仕事に取り組んでみたら、『お客様を満足させるのに手を抜かない』『従業員と助け合う』『忙しさを楽しむ』などの意味が心から実感できるようになりました。ベッラベーラで働けること、このメンバー、そして伊藤店長に出会えたこと、すべてに感謝です。ありがとうございます」
 …スタッフの発表の間、彼らと一緒に頑張ってきた様々なことが店長の脳裏を走馬灯のように巡った。これまでの努力に感謝し、一生懸命発表してくれたことに感動し、あまりにも嬉しくて号泣してしまったという。

 取材の最後に店長は、数年前に読んだ「チーズはどこへ消えた?」という本の一節に感銘を受けた話をしてくれた。「今の状況を良くしたければ、自分自身が変わること」というフレーズだ。この言葉にそれまでのことを反省させられ、自分が変わることを強く意識したそうだ。それ以来、「先頭に立って積極的に行動すること」「スタッフの話を聞くこと」「笑顔で忙しさを楽しむこと」を常に心がけながら行動しているという。
 リーダーとして忘れてはならない大切なことを、いっぱい教えてくれた実力店長だった。ありがとう、伊藤店長!