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売上前年比120%、その3つの理由

 2年前に初めて台東区という「下町」にオープンしたのだが、スタート半年間の月商は900万円程度で非常に厳しかった。半年後から1200万を突破するようになって黒字化し、現在は1500万円。4月の花見時期には過去最高の1750万円を記録した。伸び続けている要因をお聞きした。
@基本の徹底で認知度向上
 来店のお客様には絶対に満足していただくという強い信念を持ち、温かい笑顔と明るい挨拶、優しい表情、丁寧なお辞儀と言葉遣い、清潔な制服、「エレガント」で「スマート」な立ち居振る舞い等々、『基本の徹底』に努めた。1杯930円の珈琲には私たちのサービスの代金も含まれていることを、しっかりと従業員に教育していったという。
A常連客の増加
 基本の徹底を継続することで、「ゆったりした空間が心地よい、落ち着いていて品の良い店」という評判が口コミで広がり、特に50〜60代男女の支持を得て、常連客が増えていった。週7回、毎日同じ時間に来店するロイヤルカスタマーも多い。花見時期や12月のアメ横年末商戦に初回客を獲得し、固定客として確実に取り込んでいけたことも、常連客の増加に繋がっている。
Bチームワークの醸成
 従業員同士の挨拶やコミュニケーションを促し、みんなの力で店の空気感を高めていくことを心がけた。全員が同じ方向を向いて頑張ることが大切なのだ。
 東和フードサービスには「リーダーの3大業務」という指針がある。@業績の向上 A部下育成 B集団性格の醸成 だ。Bの意味は「良い雰囲気を醸成して集団を導くことであり、そのためには集団に共鳴現象を起こし、スタッフの最善の資質を引き出し、業績を向上させること」である。上野茶廊の集団性格は強く、店の雰囲気の良さは抜群だ。

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新人採用率はわずか1割
 店長方針は「地域一番店、笑顔の一番いい店を目指す」こと。そのためには「人」が一番でなければならない。したがって採用率も1割程度と厳しい。これまで登場した実力店長の中でも、採用率1割というのは3人である。大島店長は人材に関して決して妥協はしない。10人面接して10人とも不採用の時もある。
 面接時のチェックポイントは以下の通り。
@笑顔:自然な笑顔と目を見て話せるアイコンタクトの力。
Aスタイル:美しい歩き方やスマートな所作。
B上品さ:22歳以上の品位のある雰囲気の女性(ミセスを含む)を優先的に採用。
 店の雰囲気が良いせいか、お母さんに勧められて面接にやってくる人も多い。面接時に最初にチェックするのは、自己紹介がきちんとできるかどうか。友人は多いか、掃除が好きか、仕事は厳しいけれど大丈夫か、といった様々な質問もする。
 狭き門をくぐり抜けて採用されたスタッフが、数カ月経って仕事をかなり覚え、常連のお客様をいつもの席へご案内したり会話を交わす様子を見たりすると、本当にうれしくなると大島店長は語る。

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震災時の、感動の対応

 昨年の3月11日、東日本は大震災に見舞われた。もちろん営業時間中のことだ。
 あまりにも揺れが大きかったので、一時はお客様を屋外へ誘導した。電車がストップし、うろたえ殺気立った帰宅困難者であふれかえった上野駅前は、さながら戦場のような雰囲気だったという。
 コンビニを除き駅周辺の店舗はすべて閉店。この店ではガスと水が使えたため営業を継続し、お客様がどっと押し寄せた。相席をお願いしてできるだけ多くの人に入店していただいた。赤ちゃん連れのお客様には毛布を提供。さらにトイレを一般開放したり、携帯電話の充電をサポートしたり、ラジオをつけて店内に情報を流したりした。
 そして朝5時までの営業を7時まで延長。多くの人が店内で夜を明かし、朝になって「こんなに親切な喫茶店は初めてです。ありがとう、ありがとう」と泣きながら帰られたそうだ。閉店後、大勢の人に喜んでいただけたことが嬉しくて、大島店長は一人号泣した。(原稿を書きながら、私も泣いています)これこそが、飲食店の仕事をしていて本当によかったと思える感動の瞬間なのだ。

お客様からの手紙

 震災の後、本社の社長宛にお客様からこんな手紙が届いた。その一部をご紹介しよう。「……大震災の日、貴店において頂きました温かいおもてなしとスタッフのみなさまの笑顔に大変嬉しさを感じ、感謝申し上げる次第です。……(中略。ご夫婦でスカイツリー見学に訪れた折に震災に遭い、上野茶廊に来店した経緯が記されている)……私がスタッフの皆さんの活躍に感銘した点をご報告させていただきたいと思います。……」
 この後、5項目に渡ってスタッフの対応と心遣いが詳しく挙げられている。簡潔に紹介する。「@マニュアルを超えた温かい笑顔で対応していただきました。A切実だったトイレの問題。でも快く使わせてくださいました。B携帯電話の充電サポートや固定電話の使用にも親切でした。C普段は認めていない相席も、スタッフの皆さんはお客様の了解を得て一生懸命案内し、お客様も互いに譲り合っていました。D赤ちゃんを抱いたお客様と入口に近いお客様に、毛布を用意していたことに感心しました」
 そして最後にこんなふうに締めくくっている。
「……スタッフの方々の献身的な対応は、私一人が感じたことではなく、私の周りの人も口々に言葉にし、またいつかお礼に来ないといけないね、と話していました。私たちも忘れず来訪させていただきます。明け方までサービスの品質を落とすことなく頑張っておられたスタッフの皆様に感謝すると共に、経営されている幹部の方々のご努力にお礼申し上げます。貴店の発展を心よりお祈り申し上げます」
 実際に大震災の後、お菓子などを持ってお礼に来られたお客様や、それ以来常連になったお客様も大勢いる。
 「あの時、スタッフは全員徹夜で仕事をしてくれました。彼らの素晴らしい対応に、私も感動しています」と大島店長。日頃から飲食店の店長として模範となる教育を実践しているからこそ、緊急時でもスタッフがしっかり応えられたんだと思うよ。
 心に残る話をありがとう、大島店長!