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V字回復150%のポイント

 猿cafe刈谷店はオープンして5年経つ店。近隣に飲食ビルが3棟もでき、売上は落ち込んでいた。立て直しのため異動してきたのが清水店長である。これは本人の希望によるものだ。
 彼は売り上げ回復に向け、5つの項目にポイントを絞り、徹底的に実践した。これにより、360万円だった月商は1年間で550万円(150%アップ)にまで回復したのだ。以下、その5つのポイントを紹介する。

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@スタッフ教育(小さな達成感の醸成)
 教育にあたって最も意識したのはES(従業員満足度)である。特に「小さな達成感」(やりがい)をスタッフに感じてもらえるよう常に意識した。
 たとえばランチ50食が目標で、目標達成に5食足りない場合、150円のデザートをサジェストすることで目標に少しでも近づけることができる。最初から成功率100%でなくてもいい。小さな成功や達成感をどんどん増やしていくことでスタッフが自信を持ち、仕事にやりがいを感じるよう導いていった。
 清水店長はスタッフが自発的に目標を語れるように「今日は何をするの?」とさりげなく促す。するとスタッフは「お冷やは常に満杯にします」「とびっきりの笑顔で接客します」「デザートを20個とります」などと答える。目標があるからこそ、達成感も感じられるのだ。

A500円ランチの導入
 刈谷店は目立ちにくい場所にあり、立地は決して良くない。しかもおしゃれな雰囲気は敷居が高くてむしろ入りづらいと思われがちな土地柄だ。この問題点を打開すべく安価な500円ランチを導入し、ファサードにも大きくそれを掲示した。その結果、それまでは10食に満たなかったランチの注文が毎日50食以上入るようになり、ランチ売上は5倍以上になった。
 また、格安ランチで敷居を下げることにより、昼のお客様にグランドメニューを見ていただき、夜の売上アップにも繋げた。
 ちなみに500円ランチの種類は、ロコモコ、メキシカンタコライス、日替わりパスタ、照り焼きバターチキン丼など。

Bバースデーのサプライズ
清水店長の方針は「NOと言わないサービス!」である。猿cafeはバースデー利用が多く、誕生日プレゼントの持ち込みもOKで、スタッフがケーキと一種にお渡しする。花束のプレゼントや写真撮影などもある。部屋を暗くし、スタッフ全員で心を込めてバースデーソングを歌ってお祝いする。その素敵な演出に感激し、思わずほろりとしてしまうお客様も少なくない。

C全体ミーティングでチームワーク向上
 刈谷店における全体ミーティングの参加率は100%。ユニークなのは、2人1組になって相手の長所を3つ発表することだ。ペアになるのは特に親密な間柄ではないスタッフ同士。その効果はてきめんで、長所が強化されるという。たとえば「お見送りの姿勢がすばらしい」とほめられると、そのスタッフのお見送りの姿はますます美しくなる。さらに人間関係も良くなり、チームワークも抜群になるのだ。(面白い仕組みです)
 ほめる目的は「長所や行動を強化すること」にある。スタッフの行動のすばらしいところを全員の前で評価する点がいい。これなら誰もが全体ミーティングに参加したくなるし、チームワークの醸成も図れる。(店長の皆さん、ぜひ参考に!)

D週末ピークはベストメンバーで
 売れる時に売る。売るために最高のQSCオペレーションを提供する。これが飲食店の基本。刈谷店では金・土曜日はベストメンバーを揃えてピークに対応する。スポーツで言えばレギュラーやスタメン入りだ。店長が常日頃から「金土はベストメンバーで行くぞ!」と口にしているため、週末にシフトインしたスタッフは「ついにベストメンバーに入った!」と感激するのだ。(いいですね!)

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叶わなかったディナー

 清水店長の、ルーセントタワー店時代の話を紹介しよう。
 ある日の午後、高齢のご夫婦が来店した。ご主人は車イスで、おしゃれな店であることを気にしたのか、「おじいちゃんとおばあちゃんでごめんね」と遠慮がちな様子。スタッフはいつも通りの笑顔と気配りで心をこめて対応し、注文された抹茶ラテをお出しした。
 後日、ご夫婦の娘さんから店に電話が入った。「父の余命がいくばくもないことから、家族が集まって旅行でもしようかという話になり、父にどこへ行きたいか聞いたところ、『もう一度猿カフェに行きたい。おじいちゃんとおばあちゃんにもあんなに気を遣ってくれて、とても良かった』と言っております。ディナーの予約をお願いします」とのこと。一週間後の週末の予約を受けた。
 スタッフはがぜん張り切り、どんなことをして喜んでもらおうかと、ミーティングや準備にいそしんだ。車イス用に通路の幅を広げ、大きなテーブルも用意した。娘さんからの要望を受け、「あなたの娘で幸せでした。ありがとう」というメッセージ入りのケーキも準備した。
 ところが当日の朝、おじいちゃんが急に体調をくずし、行けなくなったという連絡が…。飲食店には数々のドラマがある。準備万端でお待ちしていても、たどり着けないお客様もいるのだ。ついに叶うことのなかった、おじいちゃんのディナー。スタッフ全員が涙したという。

 清水店長が店舗運営上で日々気をつけているのは、いつも通りの接客・いつも通りの笑顔・いつも通りの気配りだ。安定したサービスを提供するため、常にアンテナを高くしてお客様のニーズに応える努力を怠らない。彼は取材中何度も「100%の営業」という言葉を口にした。95%では不足、105%では過剰、99点でももちろんダメ。
100に1つ足りないだけでもゼロと同じという考えなのだ。
 150%という驚異的なV字回復の背景には、こういった妥協を許さない姿勢や、お客様に対する思いやりの心、そして大きな人間力があることを忘れてはならない。
 これからもすばらしい店づくりを目指してください。ありがとう、清水店長!

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