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売上10%向上、その理由

 鈴鹿店は、新人店長の受け入れ研修を行う教育店舗として位置づけられている主力店舗。鈴鹿市内一番の外食激戦地区(ロードサイド)に立地し、周辺には30店以上の飲食チェーンがひしめいている。競合店の多さや景気の悪さが影響し、売上前年比92%という厳しい状況が続いていた。だが現在は101〜107%と向上。その理由を伺った。
@小改装…昨年8月、500万円程度の経費で小改装を実施し、店舗のリフレッシュを図った。(看板・サインポールの改善と、座席の増設=15席)
A基本の徹底…企業理念として掲げた、原点である「感謝の心」をどう表現すべきか、スタッフ全員と話し合った結果、「きちんとした挨拶の徹底」を決めた。たとえばやきとりを焼く作業中であっても、しっかり顔を上げてお客様と向き合ってアイコンタクトし、活気のある挨拶をするという、当たり前のことを徹底させたのだ。
B提供時間の短縮…スピード提供ができるお手軽メニュー(盛置きしたもの)の出数予測と前準備により、提供時間を短縮した。
Cチームワークの醸成…高田店長は、毎日の声かけや給与明細書へのサンキューレター、全体ミーティングなどを通じてスタッフとふれあい、店の空気感を良くしている。特に個別の手書きのメッセージは効果的だ。
 また、それぞれの動きに基づいてスタッフ自ら課題を考えるよう導き、少しでも進歩があればほめる。一人ひとりの努力や存在価値を認めることで、その人の能力高めるだけでなく、人間関係も密になるのだ。このため、鈴鹿店の定着率は極めて高い。リーダーの女性スタッフは勤続8年だ。大学生も、4年間ずっと働いてくれる人が多い。これは鈴鹿店の強みである。

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女性サブリーダー、最後の勤務日(ちょっといい話)

 高校1年から専門学校2年までの5年間、アルバイトとして鈴鹿店で働いてくれた女性スタッフが、就職が決まったため、昨年12月31日に店を卒業した。サブリーダーとして活躍し、年上のスタッフにも指示を出す、優秀なアルバイトだった。
 この店で働く最後の日、示し合わせたわけではないのに他のスタッフがみんな「5年間ありがとう、おつかれさま」と言いながら、プレゼントを持って集まった。全員のメッセージが書かれた色紙と、高田店長からの花束も贈られた。
 彼女は「生意気で、みんなには迷惑をかけたと思うけど、5年間も続けてこられたのは、店長をはじめ皆さんのおかげです。本当にありがとうございました」とにこやかに語り、店の外では泣いていたという。
 何とこの日の売上は直営店の中でもNo.1。そしてこの月の売上前年比は107%! すばらしい数字でフィナーレを飾ったのである。(いい話ですね!)
 飲食店は、こんなふうにお客様や店のために一生懸命働いてくれるスタッフに支えられて成り立っている。企業にとって最も重要な資産は、スタッフのモチベーションなのだ。
 高田店長は、独身時代と考え方が変わったそうだ。「結婚して子どもを持ってからは、アルバイトのことも自分の子どものように思うようになりました。人として成長していくのを見るのが一番の喜びです」と語る。日本の未来を担う若者を育成していくことは、飲食店の店長の社会的使命といえるだろう。

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扇屋の焼師制度と真心師制度

 鈴鹿店には、焼師が3名と真心師が2名いる。どちらも扇屋独自の制度によって認定されたワザ師だ。
 焼師認定制度は、焼きの技術の向上(高品質・スピード提供)にこだわる焼き鳥専門店ならではの制度。焼師には初級、中級、焼匠(やきしょう)の3段階がある。ちなみに、36本を20分以内に一定の水準まで焼き上げるのが初級の基準。店内には「本日の焼師」という札が掲げられている。
 真心師認定制度は、気配り・目配り・心配りを念頭に置いたサービスをしているかどうかを判定。真心師に認定された人は真心師Tシャツを着用している。
 いずれも技術を競い合う大会が開催されており、地区大会を勝ち抜いた人が、年1回の全国大会に挑んでいる。
 扇屋はこの2つの認定制度により、スキルとモチベーションのアップを図っているのだ。

アルバイトリーダーの育成

 高田店長のスタッフ採用基準は以下の通り。
@第一印象(面接時の身だしなみ、雰囲気、時間厳守など)
A素頭のよさ(ハキハキとした受け答え)
B明確な目標(アルバイトをする目的・目標)
こうして採用した人をしっかりと教育し、優れたリーダーを育て上げている。鈴鹿店の強みは、リーダー1人とサブリーダー2人のオペレーション力が高いことだ。扇屋はワンマネジャーなので、強いアルバイトリーダーの存在が不可欠。店長の休日も、リーダーとサブリーダーの3人でワークスケジュール作成から発注まで、すべて行うのだ。

明日につながるスタンドミーティング

 高田店長が毎日必ず行っているスタッフとのコミュニケーションは、「シフトを上がる時の、3〜5分のスタンドミーティング」である。
 鈴鹿店の事務所にはスタッフ全員の今月の個人目標が掲示されており、まずはその達成率がどれぐらいかを尋ねる。「80%」という答えなら、「あと20%上げるにはどうすればいい?」と聞く。また、「今日は料理の提供時間が遅かったけど、どうすればスピードアップできると思う?」と聞いたりもする。
 このような質問を投げかけることで、反省点を踏まえながら明日の課題を自覚してもらうのだ。明日につながるミーティングである。
 全体ミーティングも毎月実施。店舗目標や個人目標に対する達成率や今後の目標を発表する。前述した「感謝の心をどう表現するか」といったディスカッションも、全体ミーティングの場で行う。業績が向上し、定着率も高い店は、店長とスタッフとのコミュニケーションが良好なのだ。

 高田店長の今後の夢は「自分の経験を活かして、優秀な店長を育てること」だという。真面目で誠実で、部下思いの実力店長だった。
 ありがとう、高田店長。ますますの活躍を期待しています。