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坪売上55万円の理由

 池袋店のオープン当初の月商は690万円だった。6カ月後には1000万円にまで上昇。その理由は次の通りだ。
@多彩な料理とユニークなネーミング
アジアンバルというコンセプトが女性客の心をつかんでいる。また、店長はキッチンの責任者でもあり、料理に自信がある。前述したようにメニュー名もユニーク。「爆汁!自家製鶏肉の生ソーセージ」「ぷりぷりエビトースト」「あふれるフライドポテト」等々、こだわりが感じられる。名前を変えただけで売上が3倍になった成功事例もあるほど、メニュー名は大切なのだ。
A飽きさせない「今月のおすすめ料理」
常連客の来店頻度が高いため、飽きられないように、おすすめメニューは毎月変える。グランドメニューも3カ月に1回変更。常に料理を進化させている。
Bオープンドアでマグネット効果
オープンドア&オープンキッチンだから通行人に分かりやすく、敷居も低くて入りやすい。通行人への呼び込みもしやすいのだ。
C楽しく元気、チームワーク抜群
店長方針は「お客様が気軽に入れる楽しい店づくり」。“活気・元気・愛嬌”がモットーだ。どんなに忙しくても、スタッフ一丸となって元気よく働く。
D外商活動100件
店長と社員はオープン当初から、近隣の飲食店やサービス企業で名刺を配るなどの営業活動をしている。この積み重ねは大きい。
E社員の責任感の強さ
店長を含む社員5人のキャラクターがユニーク。これが常連客が多い理由の一つである。全員、仕事に対する意識と責任感が強い。部下4人はすべて男性で、店長より年上だ。

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年上の部下を動かす方法

 飯泉店長は、次のような基準でP/Aを採用している。
1.明るく元気な第一印象
2.積極的で物怖じしない
3.心が強い
 これほどの超繁盛店では、新人といえどもメンタルな強さと積極性が求められる。その資質を見抜いて採用し、教育によってさらに磨きをかけるのだ。
 では部下社員との接し方はどうか?「年上の男性ばかりで難しいのでは?」と尋ねてみた。
年上の部下との接し方
@オープンな態度で信頼関係を築く。
A受け入れられないことに対しては、時には厳しくNOと言う。
B決してプライドを傷つけるような言動をせず、経験を尊重して素直に相談にのってもらう。
Cポジション(専門職)を任せる。
 …等々、「なるほど!」と思うことばかりだ。

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アガリコ池袋店の、ちょっといい話

 池袋店には毎日のようにバースデー予約が入る。バースデー利用が口コミで増え続けているのは、店内のお客様みんなを巻き込んで盛り上がるからだ。
 灯りが消されて店内は真っ暗に。カットフルーツをちりばめたケーキがテーブルに運ばれ、「おめでとうございます」という従業員の言葉に続き、他のお客様も一緒になってハッピーバースデーを大合唱するのだ。感極まって涙する人も多い。「実は今日誕生日なんです」と突然お客様に告げられても、すみやかに準備してお祝いする。毎日が誰かの素敵な誕生日。毎日ハッピーなお店なのだ。
 お客様がハッピーになるのと同じぐらい飯泉店長が嬉しいと思うのは、従業員がハッピーになること。特に嬉しいのはP/Aの成長だという。ある女子大生アルバイトの話を聞かせていただいた。
 彼女は消極的で目立たない人で、仕事に自信が持てずにつらい思いをしていたのか、突然シフトキャンセルすることもあった。店長は毎日彼女に声をかけ、見守り続けた。楽しそうに働く他のP/Aや社員スタッフの影響もあったのだろう、1年ほど経った頃から急に彼女は変わり始めた。とびっきりの笑顔でお客様を迎えたり、積極的に話しかけるようになったのだ。
 料理にも興味を持ち「作り方を教えてください」と、どんどん前向きな姿勢に。表情もイキイキとして、人柄まで変わったかのようだ。そしてついに、サービス業への就職も決まった。飯泉店長にとって、人生が変わるほどの変貌をP/Aが遂げるのは、感無量のことだろう。これが飲食店で働くことのすばらしさである。飲食店の店長が、日本の若者を変えていくのだ。(筆者の持論!)

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常に気をつけている店舗運営のポイント

 店舗を運営する上で、飯泉店長が特に気をつけていることを伺った。
@魅せるオープンキッチン
ホールとの一体感が感じられるよう、オープンキッチンを明るく楽しい雰囲気に演出する。従業員が楽しければ雰囲気は向上するので、毎日みんなに「仕事は楽しい?」と声をかけ、コミュニケーションを通じて満足度を確認している。
A料理の提供時間
超繁盛店だけに、提供時間が勝負。仕込みは十分に行う。少し手を加えるだけですぐに提供できるメニューを、多数ラインナップしている。
B情報の伝達と共有化
入口が2カ所あるため、案内や商品提供の順序・流れは単純ではない。このため、店長・社員・P/A間の情報伝達と共有化は必須だ。お客様一人ひとりに対する個別対応にも情報は不可欠。例えば付け合わせの香草などをよけているお客様がいたら、次からは必ず取り除く。情報を共有できていれば、誰が担当しても適切なサービスが可能なのだ。

 多くのお客様から「この店は本当に楽しい」「元気になれたよ」と言われるアガリコ池袋店。この超人気店を率いる飯泉店長の次の目標は、「地元の五反田で店長を務めること」だという。大林社長、五反田出店、よろしくお願いします。ガンバレ、飯泉店長!