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店という舞台で目標を実現

 三好店長は、寅福御殿場店をキー店舗に他3ブランドを統括するサブマネジャーだ。寅福で毎年売上を上げ、現在も売上前年比105〜110%アップと好調を維持するだけでなく、他ブランドのカレー専門店でも120%アップを実現させている。
 その三好店長から取材のはじめに「田中様の著書『店長の仕事』(商業界・出版)を、社内勉強会で使わせていただきました。今回の飲食店経営の取材もたいへん光栄です」と切り出されたのは、うれしい驚きだった。
 セント・リングスの経営理念の一つに『セント・リングスは、私達が生きがいと働きがいを見いだす生活舞台です』という項目がある。店長方針を伺うと、三好店長は真っ先にこの理念を挙げて次のように応えた。「店舗という舞台を使って、自分の目標と部下の成長(幸せ)を同時に達成することが、店長としての私のポリシーです」これはトップの考えでもある。三好店長はそれを理解し、自分の想いとして受けとめているのだ。

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売上を上げ続ける4つの要因

 売上を上げ続けている要因をお聞きした。
@笑顔とチームワーク
 最初に飛び出したのが「笑顔」という言葉。「笑顔が人に与える力を信じています」と三好店長は言う。(すばらしい!)
 彼が常に心がけているのは、P/A全員に笑顔で一声かけることだ。仕事中はスタンドミーティングで一人ひとりの話をしっかり聞き、シフトを上がる人には「おつかれさま、今日はどうだった?」と、やさしく尋ねながらコミュニケーションを図る。部下にほほえむ、ありがとうと言う、ほめる、関心を寄せる、明るく接する…それを確実に行うことで、チームワーク抜群の店になるのだ。
 「私が御殿場店に配属されてから、2人の社員スタッフの笑顔が増えました。元気で明るい店になったと言われるのは、売上が上がったことよりもうれしいですね」と、店長は語る。
A商品価値の向上
 寅福ではお米をおいしく炊くことにとことんこだわっている。大かまど飯は、こだわりの白米、十六雑穀米、季節の炊き込みご飯の3種。オリジナル米、米の浸水時間、とぎ方、火加減、釜やかまどの状態といった釜場のこだわりは、寅福の強みだ。8月のピーク時には3種あわせて1日100回以上も炊く。また料理メニューも、クオリティの高さを追求し続けている。
B前会計で提供時間短縮
 御殿場アウトレットの営業時間は午後8時まで。売上を上げるにはランチタイムの客席回転率を上げる必要がある。このため寅福初の試みとして前会計を導入した。前会計時点でキッチンにオーダーが入るので、お客様が席に着いてから3分で料理を提供できる。「週末は渋滞の中を来ていただき、駐車場に入るにも時間がかかり、レストランでも大行列。だから一番のサービスはスピード提供だと考えています。QSCのSはスピードなんです」と店長。(なるほど)
C環境整備と仕事の「見える化」
 セント・リングスでは全社をあげて職場の環境整備と仕事の「見える化」を進めている。気持ちよく働くには環境が整っていることが不可欠。また「見える化」とは、料理やご飯の盛り方などの写真掲示や、備品などの位置が一目でわかる工夫等々、仕事がしやすいようにすることだ。エリアマネジャーが環境整備チェックをするだけでなく、新人2年目のスタッフが環境整備委員として店舗巡回をするなど、勉強や会社への帰属意識を高める機会も創出している。全店ランキングも発表されるほど徹底され、他社も(ホテルなどの他業種も)見学に来るほどの優れた環境である。

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新人時代のうれしい思い出

 三好店長は新人時代(入社半年)、トゥ・ザ・ハーブズ(イタリアン)で発注を担当していた。あるときミートソースを切らしてしまい、お客様からクレームが入った。店長が不在だったため、三好新人は直接そのお客様に「私のミスでご提供できず、本当に申し訳ございませんでした」と素直に謝った。
 そのお客様は大阪のベンチャー企業の経営者で、この店のミートソーススパゲティが食べたかったのだという。「3日後また来るから30人分用意しとけよ」と言って去ったが、名前もわかっておらず、正式な予約とは言えない。店長は「本当に来店してくれるの?」と懐疑的だ。だが三好新人は30人分の準備をした。そして、そのお客様はちゃんと現れた。「お兄ちゃん、来たぞ!全員にミートソースを頼むよ。この店のミートソースはうまいから!」と言う。この30代のベンチャー社長は三好新人の素直に謝る姿勢に男気を感じ、気に入ったようだ。
 以来そのお客様は、3カ月に1度は大阪から家族で来店するようになった。三好新人はそのたびに挨拶に行き、いつも「君を応援してるよ」と励まされた。店長になってからもそのお客様は来店してくれた。「最初君を見た時は全然ダメだと思ったが、年々成長していくのを見るのがうれしかった。立派な店長になったな」と言われた時は、胸が熱くなったという。食事ができない時でも、店長の顔を見るためだけにわざわざ行列に並び、「また来るよ」と声をかけてくれるのだ。(飲食店の店長は、本当にすばらしい職業だね)

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店長は太陽だ

 三好店長は、毎日スタッフ全員に携帯メールで営業日報(売上、営業状態、お客様からのおほめの言葉やクレーム等)を送信している。「今日は目標を達成した。キッチンリーダーの指示の出し方がすばらしかった」「新人の○○さんの動きがよくなった」「□□さんの声の出し方がいい」というように、毎日意識的に誰かをほめる。ほめられた人はスイッチが入り、ますますやる気になる。
 「店長は太陽であるべきだと思います。明るい笑顔で皆を元気にする、常にエネルギーを分け与えられる、そんな人間になりたい。せっかくいただいた命ですから」と三好店長は言う。スタッフには「夢や目標を持とう。この店で身につけられるものがあるなら、一緒に頑張ろう」と語り続けている。「スタッフが輝き、一つでも成長すること、それが私の最高の喜びです」

 夢は「セント・リングスの三代目社長になること」。いや、「なります」と公言もしている。「店舗ももっと増えていると思う。その時に社員やその家族を守るというプレッシャーに耐えられる人間力を身につけたい。そのためにこそ、今を全力でやりきりたい」と語ってくれた。
 久しぶりに骨太の実力店長、三代目社長になれる人財に出会った感がある。ありがとう、20年後の三好社長!