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27坪で平均月商1000万円の、繁盛ポイント |
銀座店の客層を影山店長に尋ねたところ、「女性客が7割」とのこと。多くは20〜40代の女子会や、銀座での買い物帰りに立ち寄る女性だが、常連のサラリーマンも少なくない。お客様からは「おもしろい店」「想像以上に美味しい」「店が明るくて活気がある」という声が多く、評価はかなり高い。
繁盛のポイントを伺った。
1.本格的な和食
板前選りすぐりの新鮮魚介をはじめ、季節の彩りあふれる創作和食をリーズナブルに提供。和風バルが新しい業態であることから、フェイスブックやブログで頻繁に紹介され、板前の技と味がネットで広まっている。
2.お客様との距離感の近さ
影山店長は以前、大手居酒屋チェーンに勤めていた。板前バルは店が小さいせいか、常連客とのコミュニケーションが多い。これは大手チェーンではできないことだ。「メニューにない料理へのご要望にも応えられるので、ロイヤルカスタマー(超常連客)が増えています」と影山店長。もちろん、お客様の表情やしぐさを見てニーズをつかむことを怠らない。呼ばれる前に気づく接客を心がけている。
3.初回客へのアプローチ
「オープン当初(1年半前)は初めてのお客様ばかりなので、すべてのお客様に名刺を渡して、看板メニューや季節メニューのおすすめを徹底し、板前バルのコンセプトも説明させていただきました。その結果、多くの方に常連になっていたくことができました」と影山店長は語る。常連客は失敗しても寛容に受け入れてくれることもあるが、初回客には失敗は許されない。最初にお客様の心をがっちりつかむことが大切なのだ。
客席を増設したことも手伝って、オープン当時の売上600万円から現在は1000万円と大幅に上昇し、今もなお伸び続けている。
4.深夜帯営業の魅力
板前バルの営業は朝4時まで。深夜帯に本格的な日本料理を提供する店は少ない。このため同業者やサービス業全般の人が終業後に利用しやすく、遅い時間でも大いに賑わっている。
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教育方針は「挨拶」と「責任ある仕事」 |
キャンヴァスには次のような教育方針がある。
@店をピカピカにする(心構え)
A挨拶を徹底する(人とのつながり、コミュニケーション)
B責任ある仕事をする(実行、貫徹、ホスピタリティの追求)
Bは、魚・野菜の品質管理を徹底すること、またすべての魚介類や豊富な野菜および商品についてお客様に詳しく説明できることを意味する。これは店舗運営にあたって影山店長が最も気をつけていることの一つだ。
さらに、「この料理にはこのお酒が合います」といった美味しい召し上がり方の説明も丁寧に行うため、女性客にたいへん喜ばれている。
私も取材後に食事したのだが、看板メニューの3品がとても美味だったのはもちろん、ボリューム控えめの和風パスタや一口おにぎりなど、私の要望に合わせて料理を作っていただけたのが嬉しい。
このリーズナブルさでこのサービスを受けられるのが、「居酒屋以上、割烹未満」の業態が伸びているといわれる所以である。板前バルはこのマーケットで成功を収めているのだ。
影山店長はまた、「お客様との距離感が近いためか、常連のお客様が手みやげを持って来店してくださることも。大手チェーンでは味わったことのない喜びです」とも話す。
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仕事の楽しみ方をアドバイス |
飲食店の仕事はハードである。それゆえに店長はスタッフを気づかい、適切なアドバイスをしたり良好なコミュニケーションを図ったりする必要がある。スタッフとの関わり方を影山店長にお聞きした。「仕事をいかに楽しむかを考え、“大丈夫か?” “ちょっと休憩しておいで” というように、こまめに声がけをしています。私自身がおどけてみせて空気を和ませることもあります」とのこと。
また、スタッフの心のスイッチがONになるよう、お客様にほめられる対応を常にアドバイスしているそうだ。例えば「私の一押しの料理はこれです」や「先ほどのおすすめ料理はいかがでしたか?」とお客様に伺えば、「美味しかったよ」などの言葉が返ってくる。お客様との距離が一歩近くなる。そうやってどんどん仕事が楽しくなっていくのだ。楽しい職場環境を作ること、影山店長はそれをいつも意識している。
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■ワンポイントアドバイス■ 女性スタッフのやる気の高め方 |
この店のお客様には女性が多いが、スタッフも女性揃いだ。女性スタッフのやる気を高めるアドバイスは、以下の通り。
@個人名で呼ぶ
個人名で呼ぶのはその女性個人を認め、尊重している証である。
A積極的に会話をする
女性は会話やふれあいを大切にする。少しでも時間を見つけて仕事や趣味や家庭の話をしよう。
Bベテランスタッフを高く評価する
経験豊富なスタッフは常に高く評価。頼りにしていることを示せば、一層活躍してもらえる。
Cほめることでパワーを引き出す
徹底的にほめるのが女性の力を引き出すコツ。尊敬を集める店長からほめられれば効果は倍増。
上記については拙著「店長の仕事」(商業界)で詳しく紹介しているので、参考にされたい。
ちなみに影山店長は、休憩時に女性スタッフへのちょっとした差し入れ(お菓子等)を欠かさないという。みんなの笑顔が見たいからだ。(大事なことです!)
そんな店長が最近いちばん嬉しかったのは、東京で27cmの積雪があった時でさえ、常連客が次々と来店してくれたこと。「本当にありがたいことです」と、感謝の念を込めて語る。
板前バルはますます大きくなり、新しいスタイルの和食を世界に発信する企業として成長するだろう。頑張れ、影山店長!
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