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売上200%アップ、3つの要因

 赤坂店は、昼は「俺のハンバーグ山本」、夜は「俺のワイン酒場」へと業種を変える、二毛作の店だ。ランチ1200円、ディナー3500円と、客単価も変わる。昼はビジネスマンが多く、夜は20〜30代の女性客が6割を占める。
 1年前には、昼はそこそこお客様が入るものの、夜は1〜2組の日もあったという。それが山本店長の赴任後3カ月〜半年ほどの間に、確実に売上が伸びていった。それはなぜか?

1.ランチ客をディナーに誘導
 ランチでご来店のお客様に、夜の利用を呼びかけた。肉とワインの美味しい店であることをPRし、付け合わせの野菜へのこだわりや、ワインに合うメニューなどをおすすめしたのだ。
 店長自らチラシを配って呼び込みもした。また ファサードの置看板も、見やすくわかりやすいよう何度も改善。「日々の小さな改善の積み重ねが大事です」と山本店長は言う。
2.常連客づくり強化
 ランチのお客様に夜の常連客になっていただくため、積極的に話しかけ、ちょっとしたサービスを繰り返した。お客様の名前を覚え、好きなハンバーグやワインを全員で共有化し、名刺交換したお客様にはDMを発送。山本店長は200人の常連客を覚えており、スタッフたちも30〜50人の常連客を持っている。
 スタッフにオペラ歌手が2人いることから、お客様との会話の流れ次第で、リクエストに応えてカンツォーネを歌うこともある。歌声が流れるや雰囲気は一瞬にして変わり、店内が一体感に包まれる。
【常連客づくりのポイント】
@お客様との会話を多くする
Aお客様の名前と顔を覚える
Bお客様を名前で呼ぶ
Cお客様の好みのメニューやアルコールを覚える
D手書きの記念日カードを送る
E固定客情報の名簿を作って毎日更新する
山本店長も、これらを日々実践しているのだ。
3.元気で明るくチームワーク抜群
 取材中に私が最も感心したのは、山本店長の天性の明るさだ。若くて元気いっぱいで声も大きく、目がキラキラと輝いている。電話口の声も大きくハキハキとして気合いが入っており、笑顔が伝わってくる。売上アップの理由は、この明るさ・元気のよさだと感じた。店長のポジティブな姿勢とエネルギッシュな行動にスタッフが影響を受け、店全体が活気づき、チームワーク抜群の店になっていったのだ。
 アサヒビールの元社長・樋口廣太郎氏は、リーダーシップについて次のようにわかりやすく説明している。「声が大きくて、ニコニコ明るく元気でチョッピリ知性があれば、大概のことはうまくいく」と。

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スタッフとのコミュニケーション

 店長方針は「お客様もスタッフも幸せになる店づくり」だ。お客様からは最近よく「店が明るくなったね」「勢いがあるね」「活気があって、ハンバーグもおいしく感じられるよ」と言われるようになった。スタッフみんなの頑張りがなければ、このような評価はいただけない。
 スタッフのやる気を促す上で欠かせないのは、密なコミュニケーションである。山本店長は1日に1回は全員に声をかける。スタンドミーティング・アドバイスの回数も多い。スタッフミーティングも定期的に実施。話し合いを通じて置看板のデザインなど様々なアイデアがスタッフから生まれ、実践している。
 山本店長がスタッフを「ほめる」「叱る」のバランスは9:1。最高の笑顔で、とにかくほめる。スタッフは店長にほめられることで自信とやる気を高め、ますます頑張るのだ。
 山本店長はまた、LINEを活用して売上や仕事上で気づいたこと感じたことをスタッフに送信している。一例を紹介しよう。
「今日もおつかれ様でした。今月も売上が目標に達していることに感謝しています。今日のオペレーションはすばらしかった。ベストメンバーによる営業で、お客様との会話、プレバッシングの早さ、とびっきりの笑顔と活気、これぞ俺のハンバーグ山本のオペレーションでした。私自身も勉強になりました。これを他のスタッフにも伝えていきます。ありがとうございました」
…このようなメッセージが毎日全員に届くのだ。店に対するスタッフのロイヤリティはますます高まっていく。
 スタッフの誕生日にはサプライズがある。照明を落とした店内にケーキが運ばれる。だが当人は自分のバースデーだとは知らない。事前に協力をお願いしてあったお客様全員からいきなり祝福を受けて驚き、感激のあまり泣いてしまうスタッフも。この場面に立ち会ったお客様は、自分もこの店でこういう素敵なバースデーがしたいと思い、予約を入れてくださるのだ。スタッフのことが大好きで、とても大切にしている山本店長である。
【スタッフ・コミュニケーションのポイント】
@スタッフの誕生日を祝う
A笑顔で全員に挨拶し、毎日声をかける
B新人は毎日10分間カウンセリング
Cよかった点を積極的にほめる
D店舗目標や取り組みを全員で共有
Eスタッフミーティングを定期的に実施
F連絡ノートやメールで情報を共有化
いずれも山本店長が心がけていることばかりだ。

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人と街の繁栄(飲食業への想い)

 取材中、予約の電話が何本も入った。中には店名の似た店への間違い電話もあったのだが、山本店長は間違いを相手に理解していただいた上で、ハイテンポで明るく巧みな営業トークにより、なんと自店の予約に変えてしまったのだ。しかも複数である。電話の向こうからは「ワクワクドキドキするわ!」と楽しそうに話す女性の声も漏れ聞こえてきた。(すばらしい!)
 店舗運営で常に気をつけているのは、「お客様に笑顔で帰っていただくこと」だという。飲食業にかける想いも伺ってみた。「お客様は元気になるため、幸せになるために、楽しいひとときを過ごそうと飲食店を利用されます。大好きな飲食ビジネスに一生携わっていきたたい」と、熱を込めて語ってくれた。
 明るくてバイタリティあふれる、若き実力店長だ。頑張れ、山本店長!