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売上200%向上の、4つの要因

 石川店長は今年の3月に亀戸北口店に異動したばかりだが、この短期間に300万円の売上を600万円に向上させた。異動前の門前仲町店でも毎年のように売上を上げ、社内トップクラスの800万円にまで伸ばした、串屋横丁の立役者的存在だ。
 売上200%アップの要因は以下の通りである。
@チームワークの醸成
 3月は店長の異動に加え、卒業する学生が多いことからスタッフの入れ替わりもあって、店内の空気が一変した。フレッシュな気持ちで頑張ろうという、チームの一体感が出てきたのだ。店の前の通行人に気軽に「一杯いかがですか?」と声をかけ、「どうぞ」と明るく元気にお迎えできるようになった。
A新規客へのメニューおすすめ
 新規らしきお客様にはドリンクを伺う際に「初めてのご来店ですか?」と尋ねることを徹底。新規客にはしっかりとおすすめ商品を説明する。自慢のホルモン料理をぜひとも食べていただきたいからだ。「おすすめしないのは犯罪に等しいと、社長から教育されました」と石川店長は言う。常連客には新メニューや裏メニューをおすすめする。
B16時オープンへの変更
 17時だったオープン時間を16時にした。高齢のお客様が早めに来店される傾向が見られたためだ。これは効果があり、早めの時間に楽しむお客様が増えた。取材で16時に伺った際も、すでに6組のお客様が来店していた。
C自分のファン(常連客)をつくろう
 異動して日の浅い石川店長は、在籍3年のスタッフから常連客の情報を聞き、全常連客に名刺を渡して挨拶した。現在100人以上の常連客を認識し、ファーストアルコールを覚えている。ちなみに門前仲町店では350人を覚えていたという。「自分のファンをつくろう!」が、石川店長の営業方針なのだ。
 常連客の情報は、スタッフ全員で共有している。たとえば、串屋横丁には6回来店するともらえる「ドリンクパスポート」という販促ツールがある。期限内の最初のドリンク1杯が無料、甲類ボトル(720ml)1本は500円となる。パスポートを獲得したお客様は店内に写真が掲示される。スタッフが常連客を覚えやすい、いい仕組みだ。パスポート持参で来店するお客様は、多い店だと3割を超える。

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スタッフの採用ポイント

 石川店長のスタッフ採用ポイントは3つ。
@第一印象のよさ…串屋横丁の感性(活気・笑顔・スピード感)に合うことが一番大切。
A何かに夢中になった経験がある…スポーツや趣味、勉強などに一生懸命打ち込んだ人には集中力がある。目標に向かって頑張る人は優秀なスタッフになる。
B人が好き、サービス業が好き…人が好きな人はコミュニケーション能力が高い。人に興味がある人は積極的に会話ができる。
 上記のような人材を見極めて採用し、しっかり育てていくことが重要である。
 取材後にこの店で食事をさせていただいたのだが、その間、アルバイトスタッフや研修中の加盟店オーナーに対し、石川店長がスタンドミーティングで指導している姿を何度も拝見した。その熱心な姿勢に、あるべき店長像を実感した。
 また、たとえ最初から力を発揮できなくても、指導によって着実に伸びていく人もいる。そんな一例をご紹介しよう。

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「息子を串屋横丁で鍛えてくれ!」

 石川店長は、採用にまつわるちょっといい話を語ってくれた。串屋横丁の雰囲気やサービスを気に入り、店長とも親しくなった常連客の話である。
 その人には大学1年生の息子さんがいたが、覇気がなく、何事にもやる気がなさそうで、心配だという。ある日店長はその人から「何もできない息子だが、この店で鍛えてもらえないだろうか」と頼まれた。快く引き受けたものの、最初は本当に何もできなかったという。人見知りで、お客様との会話どころか笑顔の一つもなかった。
 だが店長の熱心な教育が功を奏し、3カ月、半年と経過するにつれ店の環境にも慣れて、元気なスタッフへと変身していった。大学4年まで店長の部下として頑張り続け、最後はスタッフリーダーとして店を任されるまでになった。(すばらしい!)もちろんお父さんにもたいへん感謝していただけた。卒業後、彼は大手企業に入社し、今は立派な社会人として活躍している。
 近年、外食企業への応募者数が伸び悩み、スタッフの募集・採用に苦しむ企業・店舗が増えている。この串屋横丁のように、お客様が自分の子どもを働かせたいと思う店、ここでアルバイトすることで子どもが成長できると思えるような、チームワーク抜群で活気のみなぎる店を目指して、店舗運営をしたいものだ。外食企業に勤める店長には、日本の若者を変えるという社会的使命があることを自覚しよう。

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「挨拶・スピード・クレンリネス」が基本

 石川店長が店舗運営で気をつけていることは、串屋横丁の3本の柱とされる「挨拶・スピード・クレンリネス」である。これが基本中の基本。あたり前のことを徹底することで、繁盛店はつくられるのだ。
 ホール運営のポイントを、石川店長は3つ挙げている。
1.お客様の表情・動作を見逃さない。
2.スタッフの動き・態度・表情を常にチェックする。
3.全体の流れと、お迎え・お見送りに集中する。
 お客様は店に入った瞬間に店の雰囲気を感じ取る。店の印象は5秒で決まると言ってもいい。お迎えする際のイメージアップに努めたい。

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 会社の方針により、達成した利益が目標を超えた場合、超えた分が店長の成功報酬(上限60万円になることが決まった。売上を倍増させた石川店長の年収がグンとアップすることは必至だろう。
 夢は串屋横丁で独立すること。夢の実現は近いと思うよ。ガンバレ、石川店長!