画像
売上前年比130%の3要因

1.食べ放題・飲み放題のシェア50%
 夜は、鉄板焼きのステーキや魚介類を含む全てのメニューが食べ放題・飲み放題で4180円(クーポン使用で3800円)。そのシェアは50%を超えるほどの人気である。1人2品以上の注文で(おつまみでもOK)「30分飲み放題380円」というのもユニークだ。
2.会話の多い接客サービス
 お好み焼きの火加減が難しいとか、もんじゃ焼に不慣れというお客様を、スタッフはいつもお手伝いしている。このためお客様への声がけが多く、自然に会話も増える。その結果、フレンドリーな会話を楽しむ常連客が増加。これは飲食店サービスの原点だ。
 村松店長が常に意識しているのは、スタッフがそれぞれのやり方でお客様とふれあえるようにするための教育である。そのためには、店長がスタッフ一人ひとりの個性を見極めて引き出すことが重要だという。
 教育(education)はラテン語で「可能性を引き出す」という意味。教育の本質がよく分かっている店長なのだ。
3.家族のようなチームワーク
 村松店長は月2回、全員参加の全体ミーティングを実施している。全員が個人目標を考え、その結果を発表する。たとえば新人なら「広島焼きの作り方を覚える」、ベテランなら「ピークタイムに店長をサポートする」「常連客との会話をもっと多くする」といった具合だ。結果発表の際は、目標を達成できているかどうか自由に述べる。しかしそれだけで終わらず、周りの意見を聞いて参考にする方向へと、村松店長は導いていくのだ。(いいですね!)ミーティングの後は新メニューの試食会や飲み会を行い、コミュニケーションをぐっと密にしていく。
 また、スタッフがその日いかに楽しく仕事できるようにするか、村松店長はとても気遣っている。その日の体調や感情を本人の表情から読み取り、こまめな声がけを心がけているという。まるで家族のように見守りながら接しているのだ。
 店長がこのような姿勢を貫いているせいか、店の雰囲気は温かく、スタッフ同士のチームワークも抜群。定着率は極めて高い。大学4年間を通して働く人や、オープン時からずっと続けて働いている人もいる。

画像
全体ミーティングのポイント

 ここで、全体ミーティングを行う際のポイントを挙げておく。
@経営理念の再確認、店に対する店長自身のビジョンを語る。
A先月の問題点や今月の改善案を発表。(行動目標)
B新しいキャンペーンや新商品の紹介、試食会の実施。
C今月の新人紹介。
D今月のベストアルバイト表彰。
Eディスカッション。(個人目標の発表、サービス向上のための具体的な施策決定など)

画像
スタッフへの声がけは「量」が肝心

 スタッフ採用時、村松店長は次の点をポイントにしている。 @第一印象(挨拶・礼儀)
A情熱(本気で働きたいと思っているか)
B体育会系(スポーツ選手は元気な声が出る)
 新人教育を担当するのは、アルバイトリーダーやサブリーダーである。店長はその教え方を見守っている。任せることでリーダーは育つからだ。
 教育に関して自信や余裕のある店長は決して多くないが、村松店長には余裕が感じられる。というのも、この店では「店長、副店長、ホールリーダーとサブリーダー、キッチンリーダーとサブリーダー」という6人の組織がしっかりと構築されているからだ。このような組織づくり・連携体制ができていれば、店長はゆとりができるし、休日も取れるし、常に次の一手を考えて打っていくこともできるのだ。
 余裕があるからこそ、スタッフとのコミュニケーションも十分にとれる。とにかくよく声をかけて話をする。話の内容は趣味やスポーツのこと、大学での勉強や単位取得の心配、彼や彼女の話に至るまで幅広い。声をかける量はとにかく多い。通常の店長の3倍ぐらいは話しかけているようだ。実はこれ、実力店長たちの共通点である。質を問う前に、まずは量。いっぱい声がけすることが重要なのだ。

■スタッフの定着率を高めるポイント

@毎日全員に笑顔で声をかける。
A新人教育システムを整え、担当トレーナーを決める。
Bやる気を引き出すほめ言葉を効果的に使う。
Cカウンセリングを定期的に行う。
D店内行事やコンテストを通じて仲間意識を高める。
Eいつも感謝の気持ちで接する。
Fあなたの店で働くことへの誇りと喜びを持たせる。

店長の“ちょっといい話”

 村松店長はアルバイト時代に付き合っていた女性と結婚した。彼女には50代の常連客がついており、彼女を通して当時の村松店長もそのお客様と親しくなった。心優しいその常連さんは、2人の結婚祝いに花束をプレゼントしてくれた上、出産祝いにアルバムまで届けてくれた。ただのお客様ではなく、親しい友人のように交流できる関係を築くのは商売の理想型であり、あるべき店長の姿と言えるだろう。
 また、こんなできごともあった。最初は人見知りで笑顔もない、サービス業には全く不向きと思われた女性スタッフの話だ。心を閉ざしているように見えた彼女だったが、店長や店長の奥様(当時はアルバイト)と一緒に仕事を続けるうち、少しずつ笑顔が出はじめ、どんどん元気なイメージが広がって、性格が大きく変わっていったという。今ではホールのアルバイトリーダーを務めるまでになった。
 大学卒業でアルバイトを辞めた人たちが、店長の結婚祝いや出産祝いのため駆けつける…ここはそういう店である。店長の部下に対する愛情深さが、家族のように温かい人間関係とチームワークを生み出しているのだと、しみじみ感じた取材である。愛が繁盛店をつくるのだ。