熊本県熊本市出身。建築会社で現場監督からスタートした異彩の持ち主。20歳で串料理店、その後神戸でモスバーガー3店舗の経営を始める。1995年、阪神淡路大震災で被災。飲食店経営の窮状を凌ぐために、勤怠管理ソフトウェア販売のキズナジャパン株式会社を設立した。飲食店経営の時代からユニークな発想でアイデアマンとして知られる。

  当時、神戸でモスバーガー3店舗を経営していました。それが突然あの1995年の阪神大震災です。店は3軒とも半壊の状態、売上は半分以下になり、とても商売にはなりません。周りのオーナー仲間も同様でした。
  実は以前から、オーナー仲間とともに店舗経営の効率化を進めるためにさまざまなアイデアを出し合っていたのです。前回お話しした「楽々繁盛」はその1つで、たとえばパートが15分、30分と勝手に超過勤務をする。時給制ですから何百円かのコストが発生します。その何百円でタマネギが何個も買えるわけです。ファストフード店はそういう世界で、こうした人件費をコントロールしなくてはなりません。ソフトウェアを開発できるオーナーの会社にみんなで出資し勤怠管理のプログラムを作り、自分たちの店舗で使って効果を上げていたわけです。
  ところが、1995年の神戸大震災の時に三店舗とも大きな被害が出て、あっと言う間に窮地に陥いりました。売り上げは60%に落ちました。そのとき助けてくれたのが、他のモスバーガーのオーナーさんたちでした。そこで恩返しのつもりで、私たちの使っていた「楽々繁盛」を差し上げたのです。すると九州の一人のオーナーさんから「これはよさそうだ。使い方を教えてよ」といわれたのです。その一言をきっかけにキズナジャパンを設立したわけです。その後クチコミで、九州でどんどん広がっていきました。現在ではJRさんも使い始めてくださって、全部で550ぐらいの店舗で使われるようになりました。当時は、まさかこんな仕事をするようになるとは思ってもみませんでしたね。

  あの震災では本当にたくさんの人たちにご支援をいただきました。これからもみんなで一緒に協力していかなければなりません。そういった「人の絆、信頼の絆を大事にしていく会社にしたい」という願いです。
  私の人生は、紆余曲折があり、崖っぷちに立たされても、その都度誰かに助けて頂きました。これは震災のときに経験したことですが、商店街の多くの店が被災しながらも、なんとか店を続けようとしていました。近所の八百屋さんは店が潰れているのでキャベツなどの野菜を道端で売っていました。私もガスがこないので店の前でフランクフルトとホットドッグをホットプレートで焼いていました。それをお互いに買い求めていたんです。大阪は、車で20~30分で行けるし、向こうで買い物をすれば安く買えたはずです。でもあの時、大阪に行く人は誰もいなかった。私にとって絆とは、「とにかく地元を大切にしよう。身内で助け合おう」ということなのです。地元への帰属意識が醸成され、仲間それぞれが豊かになるように、みんなで手を組めればいいなと私は強く思います。

  当時は、景気のどん底で失業率が5%以上ありましたから、政府が失業者対策としてワークシェアリングを推奨したのです。ワークシェアリングを導入することは簡単ですが、勤怠管理や給与計算は大変なんです。職場ごとに手当が違っていたり、締め時間や締め日が違うこともあります。でも幾つかのお店がグループでこの「インターネットタイムレコーダー」を利用すれば一台のコンピューターがインターネット経由で働く人のタイムカードを一元管理できるので、ワークシェアリングを進めることが可能となります。こうしたワークシェアリングにも対応した勤怠管理システムが評価され「ソフト化大賞」を受賞したわけです。

  震災の後に売上げが半分になった経営者は「暇なときはとにかく人を減らして人件費をカットしたい」。一方、パートやアルバイトさんは「家が潰れたりして目一杯稼がないといけない」と考えます。ここにミスマッチがあると気がついたのです。
  あるいは、地元の商店で働き手を共有して、「月曜日にうちは人がいないから貸してよ」とケースも考えられます。卸売業、小売業、飲食業の繁忙のピークは時間で異なります。早朝が忙しいのは、卸人・仲買人・配達人、小売業でしたらパン屋さん、スーパーマーケットでしたら陳列を担当する人。そして昼が忙しいのは飲食店というように大体3~4時間ずつピークがずれています。ピークに合わせてパートやアルバイトさんは2カ所掛け持ちをすると結構稼げるのです。
  「インターネットタイムレコーダー」は、携帯電話の画面に広告宣伝や販売促進のメッセージを流せるような機能もついています。利用者は、出退勤のため一日2回携帯電話に打刻する時にそのメッセージを見るわけです。たとえば、ここで半額セールとPRすれば、まっすぐ帰る人が、それを見て来店するかもしれない。これも震災時に助けてくれた社会への恩返しの気持ちから発想したものなのです。

  最近では企業の固定費削減で正社員とパートタイマーが混在するケースが増えていますし、さまざまな企業からの出向者だけで構成する寄り合い所帯の会社も多くなっています。勤務形態も賃金体系も複雑化の一途です。それに加えて、近年はサービス残業、賃金未払いが社会問題化しています。
  昨今、企業のコンプライアンスに対する意識が向上し、勤怠管理を見直す企業が増えています。手書きによる申告や、タイムカードを使っている企業の多くがアナログデータをデジタルデータにして集計、保管したいという意向があるようです。しかし、現状は複雑な計算式を必要とする勤務形態が混在しているためにパッケージソフトでは対応できない企業が多いようです。資金力のある大手企業は一から開発することができますが、その他の企業は手計算で対応しているか、パッケージソフトと手計算を組み合わせて何とかしのいでいるのが現状でしょう。
  勤怠管理システムはパッケージソフトでありながら、こうした複雑な勤務体系や給与体系に対応できる、ということがやっと知られるようになってきているのだと思います。
(次回へ続く)