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第1065回 株式会社asoviva 代表取締役 藤田貴道氏
update 24/11/26
株式会社asoviva
藤田貴道氏
株式会社asoviva 代表取締役 藤田貴道氏
生年月日 1984年8月24日
プロフィール 大学卒業後、ベンチャー企業に入社し、飲食のデリバリーを事業化し、MVPを獲得。グルメサイトの「ぐるなび」に転職し、プロモーションの世界を経験。1年で退職し、飲食店の運営に努め、32歳で独立。2024年現在、赤坂に5店舗を経営している。
主な業態 「赤坂元気(仮)」「大衆サカバ 牡蠣る。」「クラブ シュリンプ&オイスター赤坂」「牡蠣と和牛の奴隷」他
企業HP https://asovivainc.jp/

僧侶の資格と、藤田社長。

赤坂駅近くで牡蠣をいただくならasovivaが運営するショップがオススメ。「大衆サカバ 牡蠣る。」「クラブ シュリンプ&オイスター赤坂」「牡蠣と和牛の奴隷」「赤坂元気」。いずれのショップも牡蠣を美味しくいただけると評判。
デートにオススメするなら「クラブ シュリンプ&オイスター赤坂」。「オマール海老」「天使の海老」「永遠の海老」のプリッぷりのお刺身、「ディープシーレットクラブ」や「ソフトシェルクラブ」もいただけて、主役の「牡蠣」はいうまでもなく、旨い。
のんべぇには「大衆サカバ 牡蠣る。」がオススメだろう。焼酎、飲み放題で、100種類以上のオリジナルサワーが楽しめる。牡蠣好きの店長が厳選した牡蠣に心奪われつつ、オリジナルサワーをグイグイいけばいい。
さて、今回、ご登場いただいたのは、この罪深いショップを運営するasovivaの代表、藤田社長。
話は、予想外にお寺の話から始まった。
「私は1984年、長野県松本市に生まれました。うちの実家は浄土真宗のお寺で、私は寺の次男坊です。今は、兄がお寺を継いでいますが、私も(お寺を継げる)僧侶の資格をもっています。京都にある龍谷大学に進み、そちらで資格を取得しました。みなさん、僧侶というと修行僧をイメージされがちですが、浄土真宗は、それほど厳しくありません。学生生活も一般の学生さんとおなじで、私も授業がない日は焼鳥屋でアルバイト三昧です」。
「こちらの店は、お客さんとして食べに行った時にスタッフに可愛い子がいて。それで、バイトさせてくださいって。煩悩まみれですよね(笑)」。
女の子の話は置いておいて。実は、この時のアルバイトが飲食のはじまり。この時の「縁」によって、今の藤田社長があるといってもいい。あとで教えていただいたが、これも一つの「縁起」と解釈すればいいのだろうか?
「ともかく、飲食のバイトにハマったわけですが、就職はまた別の話です」。
なんでも、お兄さんが継がない場合は藤田社長が継ぐことになっていたそう。2人のうちいずれかが継がない場合、お寺が存続できなくなるからだ。
「兄がなかなか心を決めないもんですから、私は私で、専門学校に進むことを検討していました」。
「一般には知られていませんが、僧侶のための専門学校っていうのがあるんです。お経をはじめとした実技を主に勉強する学校です。大谷大学の卒業生も少なくありません。ただ、兄が寺を継ぐ意思を固めたもんですから、急遽、別の道を探さなければならなくなりました」。
藤田社長は、あるベンチャー企業への就職が決まり、東京へ向かう。僧侶の有資格者、藤田社長は大都会にどう染まっていくんだろうか。話を前へ、進めよう。

一つ目の勲章、MVP獲得。

「私が就職したのは渋谷などでヨガ教室を運営していたベンチャー企業です。社内ベンチャーを推奨しているタイミングで、キャッチフレーズは『好きを仕事に』でした。そのフレーズに惹かれ、就職。23歳で私も社内ベンチャーの1人となって飲食店をスタートします。私が23歳ですから、2007年の話ですね」。
8月に神田に、10月に渋谷にショップをグランドオープン。
「290円均一の居酒屋です。大手の飲食チェーンが、私のあとに『290円均一』のブランドをつくって大宣伝しますが、実は、私のほうが早かったんです(笑)」。
 藤田社長は、このベンチャー企業に5年勤めている。300人の社員がいるなかでMVPも獲得している。
「最初の飲食店は、うまくいきませんでした。ただ、それで終わるのではなくて、今度は、弁当事業にチャレンジします。弁当の訪問販売です(笑)」。
「最初は店頭で販売していたんですが、15時くらいになるとどうしても売れ残りがでてしまう。残り3個とかになったら買いにくいと思って、最初から多めにつくっていたからです。でも、そのまま廃棄は忍びないでしょ(笑)。それで、ある日から、売れ残りのお弁当をもってオフィスに突撃して、『お弁当入りませんか?』って始めたんです」。
ビルに飛び込み、オフィスのトビラを叩く。エリアは渋谷、赤坂に広がっていく。
「最初は『?』の人も、『え、もってきてくれるんだ!』『じゃぁ一つ』ってなり、今度は二つ、三つ、四つと広がります」。
最終的な社数を聞いて驚いた。なんと、1500社。1日に配達するお弁当は1300〜1600食にのぼり、東中野にセントラルキッチンまでつくっている。そりゃ、MVPにも選ばれるわけだ。

僧侶の深い思考と、大先輩の話。

「業績は拡大していきましたが、セントラルキッチンをつくるなど、投資もしましたので黒字化までに2年かかりました。私自身、飲食に対する思考が深まった2年間です。飲食は食材コスト、人件費などの経費を抜いて利益は10%と言われていますよね。でも、それって一つの指標にすぎないと思いませんか」。
たしかに、P/Lは固定観念の一つかもしれない。ただ、飲食店を経営する上で、大事な羅針盤であるのも事実だ。藤田社長の話は、その決められた指標と、どう向き合うかということだろうか。僧侶の発想は、奥深い。
「実は、この2年間、私は大先輩にサポートいただくんです。その先輩はコールセンターの事業部のエースだった人なんですが、不遇な私をみかねて飲食の仕事をサポートしてくださいました。当時の会社はボーナスの原資が、事業部の利益の15%と決まっていました。コールセンターは儲かっていましたからエースだったその先輩のボーナスは500万円はあったと思います。でも、そういうのを捨てて、利益ゼロ、つまり、ボーナスゼロの飲食事業部へ異動してくださったんです。私がP/Lの改善などに努めることができたのも、この先輩のおかげです」。
仕事が終われば、カフェやバーで、先輩と頭を突き合わせた。自然と経営の指南を受けていたことになる。P/Lという飲食の指標に対するアイデアは、僧侶の深い思考だけではなく、この大先輩の影響で生まれたのかもしれない。
たしかに、飲食の売上高/利益率は高くない。P/Lコストでは10%が指標となっていて、今現在、これが、もっともポピュラーな数字だ。
「10%あればいい」ではなく、「なぜ10%あればいいのか」。今の指標を疑問視する経営者がでてこないと、飲食の未来は明るくならないのかもしれない。
「いずれにしても、今の私があるのは、その大先輩のおかげ」と藤田社長は目を細める。大先輩と話し合ったシーンが頭に浮かんだんだろう。
「最初は結果を残せませんでしたが、弁当事業で会社にも財産を残すこともできましたので、27歳になって会社を卒業させていただきます」。
このあと藤田社長は『ぐるなび』に転職。1年だけだったが、営業の世界にどっぷりつかっている。
「飲食」×「プロモーション」の世界を知るためだった。

大先輩の教えは、「美学をもて」。

「私自身、最初はネット広告の効果に半信半疑だったんです。だから、飲食店の店長をしていた時には、営業をかけられても断っていたんです。でも、意識はしますよね。どこもかしこも『ぐるなび』って言い出しましたから(笑)。情報の時代になっていくプロセスをみて、もう逃げられないな、だったらそっちの世界で挑戦するのもいいんじゃないかって。それで、転職を決意します」。
<いかがでしたか?>と尋ねると「1年ですが、納得できる結果を残すことができました」と藤田社長。「ぐるなび」では早朝から深夜まではたらき「身も心もむちゃくちゃ鍛えられた」と笑う。自信もついた。オリジナルの営業ツールを作るなど工夫したことが実を結んだからだ。
「はじめから1年と決めていたんです。実は、1年前に、先輩の1人に店をやってくれないかとオファーをいただいていたんです。どうしても、ぐるなびで勉強したかったので『1年待ってください』と頼みました」。
店舗オペレーションのキャリア、経営者のスキル、プロモーションのノウハウ、そして、美学。
「『美学』っていうのもまた、大先輩から教えられたことなんです。先輩は『美学をもて』っていうわけですよ。先輩は見た目も行動もクールでスマート。とにかく、カッコいい人でした。でも、裏ではむちゃくちゃ勉強もしているし、努力もしているんです。ただ、そういうのをみせない人だったんです。私とって美学ってなんだろうと考えた時に、人が観ていても、観ていなくてもサボらないことだと、そう決めて、それを美学とよんだんです」。
「美学」、その 響きがいい。
「美学」というだけで、行動の価値が上がる気がするから不思議だ。
「美学をもて」。
ある意味、これは、どんなノウハウより、スキルより、キャリアより大事な教えかもしれない。
さて、約束通り、1年でぐるなびを卒業し、飲食店の店長として再スタートしたのは、藤田社長が28歳の時。
「もつ鍋をメインにした居酒屋です。このお店を買い取り、赤坂で再スタートしたのが、当社の創業店です」。
「私が、こちらのお店を買い取らせてもらったのが32歳の時です。今は赤坂だけで、5店舗を経営しています」。
お店については、冒頭でお話した通り。
藤田社長は「50年、100年つづくような老舗を作ろうと思っているわけじゃない」と言う。長距離ランナーじゃなく、短距離ランナー。「短時間でちからを出し切るのが性に合っている」と、そういいたげだ。
もちろん、短時間でも、つねにグレードアップは行っていく。チャレンジ精神も旺盛。今現在も、次の新店オープンに向け精力的に動いている。「できるのに、やらない」。これもまた、藤田社長の美学に反するからだ。

思い出のアルバム
 

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