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第1077回 株式会社PERFECT BEER 代表取締役 藤沼正俊氏

update 25/01/14
株式会社PERFECT BEER
藤沼正俊氏
株式会社PERFECT BEER 代表取締役 藤沼正俊氏
生年月日 1991年10月18日
プロフィール 埼玉県志木市出身。東京農業大学の北海道オホーツクキャンパスで、ビールの香りについて学ぶ。キリンビール在任中、9割の店がビールサーバーのメンテナンスを怠っていること、もしくは徹底していないがゆえに本当に美味しいビールを提供できていないことを知り、独立を決意。「日本を代表するビールメーカーを作る」を目標に掲げ、その前段階として「日本一のビール屋」になるべくFC展開を推進中。
主な業態 「PERFECT BEER KITCHEN MONNAKA」「PERFECT BEER GARDEN MONNAKA」他
企業HP https://www.perfectbeer.info/

理由を考え、ひとつずつ修正していく。考えずに努力しても意味がない。

藤沼氏は自動車整備技師である父と元保育士の母の下、3人兄姉の末っ子として誕生した。家族仲は良好で、特に父親から怒られた記憶はほとんどない。カメラと車、ビールをこよなく愛する父の影響か、兄は大手カメラメーカー、姉も間接的ながら自動車関連企業に就職した。晩酌の度、さも美味しそうにビールを飲む父の姿を眺めながら育った藤沼氏が、のちにビールの道を選んだことは必然だったのかもしれない。
東京農業大学第三高等学校に進んだ藤沼氏は、弓道部に入部。毎年全国大会に出場するほどの強豪校で、100人あまりの新入部員が最終的に15〜20人まで減ってしまうほど練習が厳しく、時には鬼コーチの拳が飛んでくることもあったそうだ。
「基本は精神論だけど、とにかく走り込みと筋トレばかり。怒られて『走ってこい!』と言われたらグランド10周、『走ってろ!』と言われたらストップがかかるまでずっと走り続けるという謎のランニングがありました(笑)」。
あまりの厳しさに耐え兼ねた藤沼氏は、仮入部時に一度、正式に入部した後ももう一度退部している。髪を金髪に染めて遊びまくる一方で、「どうもこれじゃないな」という想いはあったようだ。彼の才能に目をつけていた鬼コーチからの度々の説得もあり、再び射場へ戻る決心をした彼は、その後誰よりも練習に励み、あっという間にレギュラー入りを果たした。
「弓道では精神力や集中力、努力の仕方などいろんなことを学びました。で、いろいろ考えながら、何百本も打つ練習をしたんです。基本に忠実にやっても、どうしても自分のクセは出てくる。だから外した時はどこに外したか、なぜ外したかを考えて、ひとつずつ修正するんです。考えずに練習したってうまくならない」。
この客観性と分析力は、のちに藤沼氏が独立する際にも大いに役立つことになる。
「あと単純に、めちゃくちゃ練習しました。だからコーチに『お前はセンス』って言われるのは、ちょっとムカつきました。センスじゃない、頑張ってるんだってね」。
穏やかで人懐っこい笑顔からは想像できない、彼のガッツを感じさせるエピソードだ。

日本で唯一のビール醸造免許を持つ大学へ。

弓道の5人立(5人一組)競技で、チームの要となる5番目の射手としてメンバーをまとめるなど好成績を残した藤沼氏だが、退部時代の試合欠場が響き、弓道での推薦枠からは外れてしまった。そこで北海道網走市にある東京農業大学・北海道オホーツクキャンパスを選択する。同大はビール醸造免許を所持する日本唯一の大学であり、キャンパスにはビール研究に欠かせない設備が整っていたという。
― では最初からビールの道に進もうと? ―
「犬好きなんで、最初は獣医でもいいかなって思ってたんですけど、授業でビールの美味しさにハマっちゃって。それにやっぱりお父さんの影響が大きいですね。『ビールってそんなに美味しいのかな』って、子供のころから興味がありましたし」。
大学ではビールの香りについて研究していたそうだが、いつごろから独立について考え始めたのだろう。
「絵がすごく上手な友達がいたんです。自分の姉も絵が上手かったんで、それをネットで販売できないかと思って調べたら、ちょうどBASEっていうECサイトを作るアプリのベータ版が売られたタイミングでした。それで(シリアル・アントレプレナー、実業家、投資家の)家入一馬さんのことを知って、自分も“連続起業家” になりたいって」。
大手の経営コンサルタント企業から内定を受けたものの、「スタートアップに関わりたい」と株式会社マネタイズに就職。そこでグルメメディアの立ち上げに参画した。
「でも自分はどこかの会社に所属するのは向いていない、やっぱり自分でやらなきゃだめだって思いました」。

ビール関係のバイトを経て、キリンビールに入社。

半年ほどで退職した後、埼玉の実家に戻った藤沼氏は、当時勢いのあった居酒屋の鳥貴族、酒類量販店のカクヤス、ブリューパブの阿佐ヶ谷ビール工房、これらビールに関わる3業態での掛け持ちバイトを始め、ビールのさらなる魅力やその現状について多方面から学んでいった。
大学を卒業してからの目まぐるしい一年を経て、23歳の時キリンビール株式会社に就職。「面接官にビール愛を思いっきりぶつけて」入社した藤沼氏は、新商品の案内やサーバーのメンテナンスで飲食店をまわるうち、ほとんどの店がサーバーのメンテナンスを怠っていたり、整備されていないサーバーで劣化したビールを提供していることを知った。その理由を深堀りしていく工程で見えてきた流れは次のようなものだった。
1、同じビール、同じサーバーを使っているのに、店によって味が全く違うのはなぜか?
→それはサーバーの洗浄をしていないところが多いから。
2、なぜ店はサーバーを洗浄しないのか?
→顧客からクレームがつきにくく、優先順位が低いから。
3、なぜクレームにならないのか?
→サーバー管理でビールの品質が左右され、味が変わるということを知らないお客様がほとんどだから。
4、なぜメーカーは『もっとサーバーの洗浄をしましょう』と指導しないのか?
→メーカーにとって店はお客様だから強く言えない、徹底させられない。
「……って考えた時に、『もし第三者機関が認定する制度があれば、店側もメンテナンスにもっと力を入れるようになるんじゃないか。サーバーの品質管理次第でビールの味が大きく変わるということが一般常識になれば、美味しくないビールに対してクレームも増えるし、おのずと店側も洗浄やメンテナンスに注力してくれるんじゃないか』って思ったんです。だから独立して、まずは一般の人に品質の大事さを伝えたいなって」。
この状況を変えたい、もっと美味しいビールを飲んでもらいたいという熱い想いが、彼を独立へと突き動かしたのだ。

独立・開業・閉業、そして再出発。

キリンビール在職中にクラウドファンディングで集めた360万円と借入金500万円を元手に、藤沼氏は2016年株式会社パーフェクトビールを設立。キッチンカーを購入し、イベント出店がメインの事業を始めた。経営は未経験だったが、クラファンで獲得したファン層からの支持もあり、スタートはまずまず。その後、埼玉県所沢市を中心に5店舗を展開するほど成長した。
「でも資本提携関係のあった人との人間関係とか、人を雇うことにちょっと疲れてしまったんですよね。で、もともと3年定期借款契約だった一号店の契約が切れたこともあり、一度全部白紙に戻しました」。
フリーになった藤沼氏は、キッチンカーでビールを売りながら日本一周の旅に出る。1年ほど放浪したころ、知り合いに声を掛けられたことがきっかけで出店を決意し、2019年11月20日に株式会社PERFECT BEERを設立。東京都江東区門前仲町に「PERFECT BEER GARDEN MONNAKA」と「PERFECT BEER KITCHEN MONNAKA」をオープンした。

FC爆発のきっかけは『令和の虎』と『なおたか酒場』。

― 現在は直営店が4店舗とFC店が21店舗とのことですが、FCオーナーはどうやって集めたんですか?―
「(YouTubeの)『令和の虎』で絶賛してもらったのがきっかけで、それで一気にオープンしました」。
かねてからFC展開したいと考えていた藤沼氏は、これまでの経験を踏まえた上でまずは知り合いにFC一号店を任せ、成功確率の高いFCモデルが確立したところで「令和の虎」に出演した。厳しい虎(出資者)たちも藤沼氏の完璧なFCプランと誠実なプレゼンを大絶賛し、それを機に問い合わせが殺到したそうだ。加えて、藤沼氏の友人でもある人気ユーチューバー・相澤尚孝氏が自身のチャンネルでPERFECT BEERを紹介してくれたことも、強力な後押しとなっている。

そもそも「PERFECT BEER」とは?

株式会社PERFECT BEERのウェブサイトよると、「樽の完璧な鮮度管理、サーバーの徹底的な洗浄とメンテナンス、グラスの徹底洗浄、適正なガス圧の管理という4つの項目をクリアした状態で提供される樽生ビールを「PERFECT BEER」と定義づける」とある。
その定義を完璧にクリアした「PERFECT BEER」のビールを絶賛する声はグルメサイトの口コミにも多く、「最高のビール体験で、人生をもっと豊かに」という企業理念も確実に広がっているようだ。
「いつかキリンやアサヒ、サントリー、サッポロに並ぶような、日本を代表するビールメーカーを作りたい。そのためにまず、最高のビール体験ができる“場”を日本全国に広めていきたいです」と想いを語る藤沼氏。第5のビールメーカー誕生の日はすぐそこに迫っているのかも知れない。

思い出のアルバム

 

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