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第209回 株式会社レインズインターナショナル 代表取締役社長CEO 西山知義氏
update 11/03/08
株式会社レインズインターナショナル
西山知義氏
株式会社レインズインターナショナル 代表取締役社長CEO 西山知義氏
生年月日 1966年3月19日 世田谷区出身
プロフィール 不動産会社を経営する父を持ち、母、7つ年の離れた弟との4人家族。世田谷に生まれ、小・中はこの区内で過ごす。運動神経にも恵まれ、チームを率いる統率力にも長けていたのだろう。小学校は野球。中学ではバスケット。このバスケットでは、都大会まで出場している。高校ではアメフト部に。日大に進学したが、起業するなら早い方がよいと1年で中退。父の紹介で不動産会社に就職し、営業にでたとたんトップ営業に。1年弱勤め、21歳のとき、渋谷のワンルームマンションで賃貸・仲介の不動産会社を設立。30歳になって初めて、三軒茶屋に17坪、28席の焼き肉店を出店。これが、のちの牛角となる。
主な業態 「牛角」「しゃぶしゃぶ温野菜」「かまどか」「居酒家 土間土間」
企業HP http://www.reins.co.jp/
ジャパニーズドリームというものがあるのか、どうか。私はもともと怪しいと思っていた。起業し、一代で成功している経営者の多くをみてきても、そう思ってしまうのは、名を成し、財を成したとしても、ただそれだけで終わってしまうことが少なくないからだ。ドリームという以上、そこには後に続く者からの憧れなり、目標なりが潜んでいなければならない。当然、スケールが大きいほど快く響く。今回、ご登場いただいた株式会社レインズインターナショナル代表取締役社長兼CEO 西山知義が描く夢はいまなおでかい。一言でいえば、「食」の価格破壊を行い、食文化の新たな方向性を打ち出そうとしているのである。すでに西山率いるレインズインターナショナルが多くの経営者に、また消費者に驚きと感動を与えたのは誰もが認めるところだろう。だが西山は、それだけではまだ満足せず、その先の目標をいまなお追いかけている。名を成しても、財を成したとしても、なお追いかける、これこそが本来の夢だ。私のいう、ジャパニーズドリーム、彼なら描けそうな気がした。

父は不動産会社の社長。

西山の父は不動産会社を経営していた。一時期はTVCMをオンエアーするほどの勢いがあった。北海道や九州にも拠点が広がっていた。ところが、オイルショックなどの影響で、倒産する。幼少の頃から父の事業の盛衰をみて育ったのが、今回、ご登場いただく西山知義である。「子どもの頃の父はとにかく怖い存在でした。仕事で忙しいから週に2〜3日しか会えませんでしたが、言われたことは良く覚えています。たとえば単純なことですが、『人に迷惑をかけるな』『嘘はだめ』。怖い父から言われるものですから、絶対守ろうとしますよね(笑)。ただ、豪快な性格でもあったのでしょう。いまでいう大人買いをしてくれるような人でした。一方、母は控えめな人だったんですが、父の代わりという気持ちもあったのでしょう。躾にはうるさい人でした。いずれにせよ、私が小学生の頃は羽振りもよく、豪邸ではありませんが、住まいもちゃんとありました。母が料理好きということもあって、高級なレストランなどにも行きましたし、海外へも家族旅行に行きました。ところが、オイルショックの影響で、会社が倒産してしまいます。いままであった家やクルマも手放し、また借家からの再スタートです」。いったん倒産したものの西山の父は、情熱を失ったわけではない。ゼロからのスタートをまたすぐに切っている。

野球、バスケ、アメフト。

父の浮き沈みをみながら、西山は、「母を安心させてあげたい。そのために独立しようと少年の頃から起業することを思い描いていた」という。そんな健気な西山を、母はあたたかく見守り、きびしい躾を行う一方で、いつも好きなことをやれ、と応援してくれていた。さて、小学生で野球、中学でバスケ、高校でアメフト。これが、西山の経歴だ。バスケット時代には、毎日16キロ走った。世田谷区で2位になり、都大会にも出場している。アメフト時代は、もっと強烈だった。アメフト日本一の高校。練習量も、上下関係もハンパではなかった。「理不尽なことがあたりまえのように行われました。先輩からしめられたと良く言いますが、ぼくらがいう、しめられた時にはもう流血していますから(笑)。それでも、その頃があったから社会の理不尽さにもついていけたのだと思います」。高校2年で親許を離れ、学校の先生宅に下宿している。初めて親許から離れて暮らしてみて思ったことは、母への感謝だった。高校時代にはアメフトの練習の合間を縫って、アルバイトもした。「とんかつ屋」だった。そのバイトがまたきびしい。5分遅れたら、1時間ただ働き。皿1枚割ると500円。アルバイト時代に、すでに理不尽な社会の洗礼を浴びた。

日大入学。1年で、中退。

付属高校から日本大学に進学する。だが、授業には顔をほとんどださず、パーティ券を売りまくった。いまでいう学生起業家で、パーティを主催したりイベントを企画したりする会社を興している。周りからは、どんな風に見られていたんだろう。「いつも何かやりたいと思っている奴。そう思われていた」と西山。いかにも西山にお似合いの評価だ。実際、西山にとって大学は狭すぎた。本格的に事業を興すため1年で中退した。とはいえ気分的には卒業だったのではなかったか。もともと大企業に就職する気はさらさらない。だから学歴など気にならなかった。むしろ起業するなら早いほうがいい。これが、西山の考えだった。大学を辞め、父の紹介で社員数30名、営業20名の不動産会社に就職した。半年はベンツの掃除やら、銀行の振込みやらで毎日が過ぎる。いつになったら営業をさせてくれるのか。ようやく半年経った頃、営業に出るようになる。途端にトップセールスになった。周りが目を見開いた。ほかの社員とどこが違っていたのですか? と尋ねてみた。「ぼくは起業することが目的です。だから、どうすれば契約が取れるのか、そればかり考えていました。売れている先輩たちのやりかたを徹底的に真似たのもそのためです。志が違うだけで、結果も違ってくるのです。もちろん、会社を作るのだから、ここでトップになって当然とも考えていました」。1年弱だが、それで充分と思った。チカラも、自信もついたからだ。1987年6月 、国土信販株式会社を設立し、不動産賃貸管理事業を開始する。西山、21歳の時である。

渋谷のワンルームマンションで起業。

「渋谷にワンルームのマンションを借りて、起業しました。後輩と2人。彼が最初の社員です。最初の半年間ほどは、後輩に給料を払うので精一杯でした。ぼくはもちろん無給。賃貸の案件が徐々に増え、仲介を始めたことで新たに社員を雇う余裕もようやく生まれました。ですが、当時の不動産営業といえば完全歩合給です。うちの給与システムもそうでした。だから、離職が激しい。なかには仕事の途中にパチンコに行く社員もいる。振り返れば、経営者としてぼくが未熟だったのでしょう。『どうして、できないんだ』。そんな風に怒られて、モチベーションが上がるわけはありません。結局、ぼくは営業という仕事はできたけれど、マネジメントは、てんでできなかったんです。それどころか、社長と社員という信頼関係も成り立っていなかった。それを証明するような、一つの事件が起こりました。設立から3年後、金庫から600万円のお金が消えてなくなったんです。横領です。犯人は、社員の誰か。警察にもそれ以上は、わかりません。結局、10人中2人を残し、それ以外の社員はすべて解雇しました」。真犯人はもちろんまだやぶの中。だが、それから数ヵ月後、辞めさせた社員たちが会社をつくった。資金は、間違いなく金庫に眠っていたものが使われたのだろう。歯を食いしばった。社会という組織が理不尽だというのはわかっていたが、人までこうも理不尽だとは思っていなかったからだ。

ポテトの教訓。

西山の発想はユニークだ。この横領事件を経て「営業という職人に頼らずとも成り立つ会社」づくりを模索するようになる。突拍子もない。そう思うのだが、お手本までしっかりあった。マクドナルド。クルーと呼ばれるアルバイターたちがお店を動かしている。このマック方式を我がものにするべく、アルバイトを開始した。社長業に加え、アルバイト生活が始まった。評価制度、研修制度、すべて斬新だった。目をサラにして、しくみを覚えた。だが、このとき西山はしくみ以上に大事なことを教わった。些細な会話だった。「先輩が、7分経つとポテトを捨てるというんです。もったいないじゃないですか。だから、何故ですか? って、質問したんです。すると、キミがお客様だったら、冷めたポテトを食べたいと思う? 食べたくないだろ」。たしかに、そうだ。西山の頭は混乱する。いままでは、たとえば冷めたポテトをいかに客に売るかが大事だった。それが好成績につながってきた気がする。だが、どうだ。「食べたくないから」。単純なそれだけの理由で7分ルールが成立している。捨てるのが嫌なら、廃棄量を少なくする努力をすればいいというのだ。「自分にはその視点が抜けていた。いままで自分だけ成功すればいい、と考えていましたから。だから社員たちも辞めていったんです」。西山は自らの過去をバッサリ切られた思いがしたのではないか。ここから西山の第二の幕が上がる。「職人不在の会社」「感動創造」がキーワードになっていく。

焼き肉店、開業。

不動産会社が、飲食店を経営する多くのケースは事業の多角化である。ある程度の資金を用意したうえで、フランチャイズに加盟することも少なくない。だが、当時、西山には金もなく、担保も、資金を借りるあてもなかった。「仲介という事業では、商品化も困難だし、手数料を下げればたしかに喜んでもらえますが、それだと収益が落ちるからできない。悩んでいるときに、たまたま起業家のセミナーに参加する機会をいただいて。そこで改めてうちの会社には差別化できることがなにもないと思い知らされるんです。何のために仕事をしているんだろう。仕事ってなんなんだろう。オレはどんな会社をつくりたいんだろう、と。その難問の向こうに飲食店という答えが待っていたんです」。「メニューをつくることで差別化ができる。感動も、創造できる、これだと」「資金もなかったんですが、職人をなくして、人件費を下げて、原価率を上げてよいものを出せば、駅から離れた2等地でも勝負できると踏んだんです」。まったく経験のない事業を西山は誰の手も借りずゼロから立ち上げた。このとき開業したのが居酒屋を居抜いた17坪28席、牛角のはじまりの店だった。「焼肉店ではまず流していないようなジャズを流したり、創造的な色ということでこげ茶系に統一したり。メニューも筆文字にしました。日本流の焼肉店をつくろうと思ったからです。最初からデザートにはイタリアンジェラートを置いていましたし。とにかくいままでにないような店をつくろうとしたんです」。ところが、開業してふたを開けたところ、クレームの嵐。それもそうだろう。デザートのあとに、サンチェを出してしまう。スープは煮詰めすぎてすっぱい。職人不在ゆえのほころびが、開業した途端に現れた。

悪口、聞かせてくれたら、300円。

2011年現在、牛角は全国はもちろん海外にも広がっている。牛角以外のブランドも多彩だ。開業からは15年経つ。焼肉のイメージをすっかり置き換えた功績は誰もが認めるところだろう。パッションだけではだめ。パッションとサイエンス。経営には「この2つ大事だ」と西山はいう。かつてマネジメントに手を焼いた人とは思えない自信たっぷりの話ぶりだ。レインズインターナショナルの経営方針や運営ノウハウを聞いていると、たしかにそうだと頷いてしまう。モニタリングからはじまる客数のアップの戦略や、客単価アップの戦略は、単に売上アップだけではなく、部下のマネジメントの向上や、社員のモチベーションアップにも役立っている。科学的なアプローチによって店舗の運営が行われていることで標準化が図られている。この科学的なアプローチ、すなわち「サイエンス」が、レインズインターナショナルの、とりわけ牛角の、牛角たるチカラの源であろう。ベンチャー・リンクと共にフランチャイズ事業を展開してきた、その成果の一つと置き換えることもできる。ただし、である。開業当時、すでに牛角は、牛角らしい戦略を取っていた。「まったくお客様が来ない。それじゃお客様に喜んでもらえない。それで、レジのところで悪口を聞かせてくれたら300円進呈します、ということをやったんです。そして、いただいたクレームをできることとできないことにわけ、たとえば外装なんて、どうにもできないけれど、料理をかえるとか、できることはすべてしました。半年ぐらい経った頃でしょうか。もう、行列ができるようになっていました」。悪口、聞かせてくれたら、300円。パッと思いついたアイデアのように思えるが、けっしてそうではないだろう。お客様のために、また「感動創造」という四文字を実現するために、どうすればいいか。その強烈な思いが、かたちになった気がする。そういう意味では、やはりパッションもなくては駄目だ。科学的手法を取り入れさえすればいいというものでは、ないのだろう。

さらに夢は大きく。

1966年生まれの西山は、2011年、現在、45歳になる。スタートは不動産と異なるが、彼もまた飲食に魅せられた1人だ。過去を振り返ってみると、飲食業界のなかでも、とりわけ成功した1人ともいえるだろう。だが、冒頭に書いたように、西山の目標はまだまだ先がある。食の価格破壊と共に食文化の新たな方向性を打ち出そうと、いうのだ。「飲食の世界は25兆円です。でも、5000億円程度の会社で、もうトップです。裾野が広いともいえますが、それだけの市場をつかめる会社がないということもできるでしょう。たとえば、ファッションではユニクロのような会社もある。ああいうインパクトを起こし、今後の飲食の方向を打ち出していきたいんです」。牛角でたしかに一つの衝撃を西山は私たちに与えてくれた。だが、まだそれだけではないのだという。西山が打ち出す新たな方向性に、我々もまたはやく出会いたい気がする。「志があれば、夢は叶う」。最後に西山の言葉を、いまからの若者たちにも伝えておきたい。

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牛角の前身、1号店目の「焼肉市場 七輪」
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