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第912回 株式会社おすすめ屋 代表取締役CEO 加藤誠庸氏
update 22/12/20
株式会社おすすめ屋
加藤誠庸氏
株式会社おすすめ屋 代表取締役CEO 加藤誠庸氏
生年月日 1984年3月8日
プロフィール 1984年、神奈川県横浜市に生まれる。高校1年のとき、PCに出会い、オンラインゲームに夢中になる一方、会社経営の要素やノウハウを身に付ける。卒業後、二浪を経験して東京理科大学に進学。統計工学や生産管理を学ぶ。大学在学中に飲食店でのアルバイト体験を通し、WEB広告媒体を編集。大学卒業後、その体験を基に新たな販促戦略に着目し、飲食店に特化したコンサルタント会社を設立。31歳のとき、八王子に「おすすめ屋」1号店を開業すると同時に従来型の経営ではなく、PC(デジタル技術)を活用した飲食店経営に挑み、これまでにない新たな境地を拓いている。
主な業態 「おすすめ屋」
企業HP https://osusumeya.co.jp/

ごく普通だった子が夢中になったものとは。

料理70品・ドリンク70種を揃え、2000円で食べ放題・飲み放題で知られる“おすすめ屋”13店舗(2022年11月に2店舗新規開業の予定)を率いる加藤氏。
「生まれは神奈川県横浜市戸塚区です。公務員の父と専業主婦の母との3人家族で育ちました」。
「小学校・中学校の頃は、あまり勉強はしませんでしたね。当然ですが、成績は良いとはいえなかったです」。
高等学校は、1903年設立の神奈川県下で最も歴史のある私立男子校・逗子開成高校へ進学。加藤氏が進学した時代は高等学校からの生徒募集があったが、現在は、完全中高一貫校で代表的な進学校でもある。
「小学校から高校まで通して、ごく普通の子だったと思います。一方では一人っ子だったこともあり両親は大学に進むことを希望していましたが、学校へはあまり行かず進級も落第しない程度にギリギリでした」。
では家で何をしていたのか。
「パソコンでオンラインゲームに夢中になっていました」。

PCとの出会い。夢中になったオンラインゲームが人生を変えた。

「高校1年のとき、初めて触れたPCが人生を変えたように思います」と振り返る加藤氏。加藤氏が高校1年生といえば2000(平成12)年。当時のPC普及率を調べてみると、“Windows98”の登場も相まって世帯普及率が急速に伸びた時期に重なる。
「友だちの一人がやっていたのがきっかけになったんですが、ほぼ独学でハードやソフトを調べオンラインゲームに夢中になりました」。
ゲームでは作戦を立案しチームに指示を出しながら戦うなど、ゲームを通して会社経営の要素やノウハウを学んだと同時に学校では得られない知識や社会人との交流も生まれた。
「同世代には、こうした人はほぼいませんでしたね。これまで接してきた世界とはまったく異次元の領域でしたし、新鮮でした。先ほども言いましたが、一人っ子だったこともあり、決して押し付けではなかったですが、大学に進むことを言われていました」。
高校3年の頃、将来的な独立を考えていた加藤氏が入学したのは東京理科大学。
「現役のときはセンター試験を受けた程度で受験せず浪人。一浪して受験したもののどこにも受からず。二浪して東京理科大学に合格、入学しました」。
余談ですが東京理科大学の歴史は古く、1881(明治14)年に創立した“東京物理学校”が前身で、自然科学教育を行う高等教育機関としては国内で2番目の歴史を持ち、私立の理系学校としては国内最古の歴史を持っている。ちなみに、明治の文豪・夏目漱石の“坊ちゃん”に登場する“物理学校”は、東京物理学校のことを指している。いずれにせよ加藤氏が進んだ東京理科大学は、歴史と伝統のある超難関大学なのである。
「大学では、統計工学や生産管理を学びました。一方で、地元と新宿の飲食店でアルバイトをしながら、同時に税理士になるための勉強もしていました」。大学卒業後の2015年、31歳のときに八王子に“おすすめ屋”1号店をオープンするのだが、この時点では、“飲食業で独立・起業”ということは考えていなかったようだ。
ただ、学生時代のこの時期、情報がアナログからデジタル化へと移行する変化が目に見えて顕著になり、このタイミングをうまく捉えたことが、今日の礎になった。

“機をみるに敏”。アナログ情報からデジタル情報へ

「この時期、“ホットペッパー”がフリーペーパー(印刷物=つまりアナログ)からWEB(デジタル)に切り替わるタイミングでした」。
アルバイト先の飲食店でWEB系広告媒体を編集しながら成果を出すために“SEO対策”を独自に行い、自ら周囲の店舗や企業にアプローチ、予約客の売上から10%の手数料を貰う仕組みを構築した。
ちなみに“SEO対策”とはマーケティング手法のひとつで、検索エンジン上で自社サイトを検索結果に上位表示させ、検索流入を増やすための対策のことで、そのサイトが達成したい最終目標(飲食業であれば予約数や来客数など)に繋げることが最終的な目的となる。
「ひと言で言うと、“WEB集客とコストコントロールを提供するサービス”ということになります。先ほども言いましたように学生時代にアルバイトをしていた店舗から始めたので当初は個人事業主として取り組んでいました。月100万円ほどの収入がありましたが、あまり遣わずに貯金していましたね。ケチだったんでしょうね」。
大学卒業後、飲食店に特化したコンサルタント会社を設立、近隣の飲食店への営業、アプローチを通して成果を得ることになる。「多いときで50社ほどの企業と取引しました」。
アナログからデジタルへの移行期。好都合な状況や時期をすばやくつかんで的確に行動することで、加藤氏は新たなビジネスチャンスとより大きな可能性を掴みとった。

参入障壁を高く設定することで、他社との差別化を図る。

“SEO対策”を活用し飲食店に特化したコンサルタント会社で積み重ねた業務経験は、加藤氏に次なるステップ〜飲食店の経営〜という次への飛躍をもたらした。
「会社経営も軌道に乗った頃、資金も溜まり、お店を出しても勝負できるなという確信が得られました」。
2015年、八王子に“おすすめ屋”1号店を開店。31歳のときだった。ただ居抜き物件だったこと、原価率が高かったことなどもあり決して順調だったわけではなかったと振り返る。試行錯誤を繰り返し、ビジネスモデルを探った。そして約3年、独自の結論を得る。
「昨今の飲食業界は、路面店は人気で空中階は不人気。また居抜き物件は人気でスケルトンは不人気というようなセオリー(?)があるようですが、すべて“逆”をいきました」。
「“空中階”+“スケルトン”で場所を選ばず参入障壁の高いビジネスモデルを確立しました。つまり、こうしたビジネスモデルであれば競合はいませんし、たとえば流行りの路面店で勝負する低価格居酒屋は仲間ではありますが、競合はしないんです」。すなわち、参入障壁が高ければ競合は存在せず、無駄な戦いをする必要はない。
こうした“おすすめ屋”のビジネスモデルに基づき特化した内装、最低限の人数で最大限のパフォーマンスを発揮できるよう人間工学に基づく超効率設計などが生まれ、2017年に上野店開業に続き、池袋店、大宮店など順次、開店に漕ぎつけた。

“直観”や“感覚”に委ねた時代からデータを活用する時代に。

「コンサルをしていて思ったことがありました。それは、多くの飲食店は過去の経験に基づく“直観”や“感覚”で大事な経営判断、意思決定をしているということでした」が、
こうした方法だと、“商い”が経営者個人の判断や価値観に左右され、従業員との共有がなされない傾向がなきにしもあらずだ。極端な言い方をすれば、これは大きな損失だ。そこで加藤氏は考えた。
「データ分析に基づく科学的根拠による意思決定を重視する、ということを徹底しました」。
データを収集・蓄積することは、誰だって可能だ。問題は得られたデータを分析、解析したうえで、どのような対策を施し結果(成果)に結びつけるかということだ。
加藤氏がこうした発想、結論に辿り着き実施したのは、高校1年で触れたPCとその可能性、大学で統計工学や生産管理を学んだことが背景にあったのかもしれない。これは課題の発見、高度な知識や先進性、将来展望など幅広い視野が必要で真似ができそうでできない領域のことのように感じる。

データ分析を活かした次世代型居酒屋の姿とは。

“おすすめ屋”では、データをどのように収集し、どのようにデータを活用しているのか。具体的な施策をみてみよう。
「まず、自社で予約センターを運営しています。さらにすべての店舗の来店情報をセールスフォース(米国カリフォルニア州に本社を置く、顧客関係管理(CRM)ソリューションを中心としたクラウドコンピューティング・サービスの提供企業のこと)を使いクラウド管理していて、瞬時に必要なデータにアクセスできます。その結果として店舗毎のリピート率、時間帯、曜日別のリピート率やLTV(顧客生涯価値)を算出することができます」。
飲食店にとって来店客の動向が最重要課題。こうした来店客動向の把握が店舗運営に直結することはいうまでもない。次にメニュー選定についてみてみよう。
「お客さまが何回同じメニューを頼むかを集計し、その結果を踏まえメニュー構成画面に変更を加えます」。
「すべてのメニューの注文データを集計し消費者のプレファレンス(簡単いえば“好み”)を理解した結果として在庫管理の最適化へと結びつきます。また自社で設定した厨房内の4つのポジションごとの負荷率(たとえば焼き物だったら〇分、煮物だったら□分というような)を計算しメニュー構成を最適化。こうすることでお客さまへの提供時間(客にとっては待ち時間)の短縮をはかり顧客離脱を防ぐことに繋がります」。
「また、食材などの発注数量の最適化や、メニュー変更がオーダーに与える影響を分析する、あるいはリピート率にどう影響するかなど検証することができます」。
こうしたデータ分析は、販促面や人材面などでも効力を発揮している。
「販促面でいえば、1回あたりの来店の費用対効果に加えLTVをだし、1回あたりの来店価値を算出、1組あたりの平均来店人数や平均離脱回数を把握することで最小コストで最大の効果が得られます」。
「人材面、つまり採用面では、スタッフが足りなくなったから慌てて募集するのではなく、過去の離職データを基に何カ月後に何人減るのかを予測し、スタッフが足りなくなる前に募集することで、人材不足を解消しています」。
このようにデータの収集と活用は多岐にわたり、今後も斬新な活用方法が考えられそうな印象を受ける。

科学的な経営環境を活かして。

悪い言葉で言えば“どんぶり勘定”的な飲食店経営に“科学の目”を持ち込んだ加藤氏が描く将来の姿は……。
「地域によってはFCの可能性がゼロではありませんが、基本的にはFCゼロで50店舗を目途に全国展開を考えていますし、上場も視野に入っています」。
「その後は、現在の環境で構築した科学的な経営管理を活かし、M&Aを通して企業再編を行っていきたいと考えています。また、提供品質のより一層の向上に挑むため、一次産業、二次産業を巻き込んだサプライチェーンの構築も行っていきたいと考えています」。
アナログ世界からデジタル世界への移行期にデジタルで広がる世界、デジタルが創り出すビジネスの広がりと可能性にいち早く着目し、“科学的根拠に裏打ちされた飲食店経営”を実践している加藤氏。その行き着く先が楽しみだ。

思い出のアルバム
 

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