C-United株式会社 代表取締役社長 友成勇樹氏 | |
生年月日 | 1963年7月5日 |
プロフィール | 中央大学卒業後、日本マクドナルドに入社。25歳で店長、30歳でスーパーバイザーに昇進。34歳で渡米し、ビジネススクールでMBAを取得。米国マクドナルド本部の教育機関「ハンバーガー大学」のプロフェッサーに任命され、世界120カ国以上のマクドナルド中間管理職スタッフを指導。40歳で日本マクドナルドを退社。その後、モスフードサービスの取締役などを歴任する中、2018年に投資ファンド、ロングリーチ・グループからオファーを受け、「珈琲館」の社長に就任。同社社長として、2020年に「シャノアール(ベローチェ)」、2022年には「ポッカクリエイト(カフェ・ド・クリエ)」を統合し、新たな戦略的アプローチでカフェ業界の再編を進める。 |
主な業態 | 「珈琲館」「カフェ・ベローチェ」「カフェ・ド・クリエ」他 |
企業HP | https://c-united.co.jp/ |
とにかく、話のスケールが大きい。
「日本飲食業株式会社のような気持ちで経営している」と、今回ご登場いただいたC-United株式会社の代表、友成勇樹さん。
その友成さんが率いる「C-United」は、2021年4月、珈琲館株式会社と株式会社シャノアールが統合することで誕生している。現在は「カフェ・ド・クリエ」も加わり、首都圏の様々な街で“一杯のコーヒーに心をこめて“提供。カフェ業界の頂点に立つ会社の1社となっている。
主要ブランドは「珈琲館」「カフェ・ベローチェ」「カフェ・ド・クリエ」。
ところで、友成さんにインタビューするのは今回が2回目となる。初回時にご紹介したプロフィールは以下。
<1963年、東京都文京区生まれ。中央大学卒。「日本マクドナルド」に入社し、異例のスピード昇進を重ねる。34歳から米国マクドナルド本社(シカゴ)へ。米国KGSMにてMBA修了。4年の海外勤務を経て帰国したあと、新会社の社長に抜擢。その後日本マクドナルドを退社し、独立後、飲食関連会社を立ち上げる。以降、モスフードサービスの顧問に就任。関連会社の会長職などを務めたのち、2018年7月に珈琲館の社長に就任する>
「日本マクドナルド」「モスフードサービス」、そして「珈琲館」。
いずれも日本を代表する飲食チェーンである。
「日本マクドナルド」に入社し、25歳で店長に、30歳でスーパーバイザーに昇進。そして、34歳になった友成さんに下りた辞令は「シカゴに行け」だった。
「最初の辞令では『長野(冬季オリンピック担当)に行け』だったんですが、すぐに取り消され、『もう少し遠いところになった』と言われた」と、一度目のインタビュー時に面白可笑しく話してくださったのを記憶している。
そのシカゴで、MBAを取得。3年目からはアメリカ本社でプロフェッサーとして勤務。「世界のマクドナルドの本社ですからね。いい経験にもなりました」と軽くおっしゃったが、むろん、異例の人事。世界でも数名しかいないプロフェッサーへの抜擢だった。
38歳で、帰国。そして、新会社の社長に就任する。
友成さんの事業プロフィールは学生時代からスタート。中央大学在学中、新宿にレストランを開業する。だが、卒業前にクローズ。2000万円の借金を背負って「日本マクドナルド」に就職している。
25歳での店長昇進は、有能な人材が多い「日本マクドナルド」のなかでも異例の人事。「借金があったから頑張らないわけにはいかなかった」と友成さんは笑う。
さて、数年ぶりにお会いした友成さんは、「珈琲館」の社長から「C-United」の社長になっていた。その経緯から、今回のインタビューが始まった。
「珈琲館の社長になったのは、2018年の7月です。私が社長に就任した当初は、さすがに厳しい状況でした。珈琲館はフランチャイズがメイン事業ですが、本部機能が脆弱で、フランチャイズを支援する体制が十分に整っていませんでした」。
FCオーナーとの会話を重ね、同時に本部機能を整備するなどして「珈琲館」のリブランディングに着手する。
その結果、400万円〜450万円だった平均月商(直営店)が、数年で約1.8倍になる(FC店の売上も約1.4倍アップ)。店舗数は、2025年1月現在、200店(内、直営100店)、最盛期に比べると30店舗くらい少ないが、法人契約が1.8倍にアップしている。
「今までは、個人オーナー、いわゆるシングルストアが多かったんですが、法人契約が進んでいることで、今まで以上に店舗数の拡大が期待できます」とのこと。
この「珈琲館」再生の最中の2020年、友成さんは株式会社シャノアールを買収している。
「シャノアールが運営するカフェ・ベローチェは、珈琲館とは違って、都会のオアシスとしてビジネスパーソンに支持されているのがストロングポイントでした」。
「from toの中間点」と友成さんは表現する。簡単にいうと、移動の合間に「いっぷくする」ということだろう。この「いっぷく」需要は案外、大きい。
今なら、プレゼンテーションに向かう途中に立ち寄り、ノートパソコンを起動し、企画書を作成しているビジネスパーソンもいるだろう。
友成さんが言う通り、シナジー効果も期待できる。
だから、新星、「C-United」は、新たな期待を背負いつつも、華々しくスタートする。そのはずだった。しかし、スタート直後、友成さんは大きな溜息をつくことになる。
「シャノアール社買収については、旧珈琲館株式会社の社員でも一部の人間しか知りませんでしたし、あちらも同様です」。
友成さんが、初めてシャノアール社を訪れた際の話。
「買収について、初めて聞くスタッフもいたようです。だからか、みんな私をみて、『こいつはだれだ?!』って(笑)」。
見解のちがいもあった。
「現場のスタッフたちは『店は儲かっている』っていうんです。マーケティングのメンバーも『プロモーションを仕掛け、売上は上がっている』っていうんです。たしかに、部署ごとでいえばPLは黒字。でも、全体は赤字だったんです」。
「だれも財務を理解していなかった」と友成さんは溜息をつく。だが、友成さんの溜息は、これだけではなかった。
「C-Unitedは2020年2月1日にスタートします」。
<コロナですね?>
「そう、ズバリ、コロナとおなじタイミングでした。都心ではビジネスパーソンの移動がなくなります。だから、ベローチェは大変だったんです」。
<資金繰りが苦しくなる?>
「そもそも赤字ですからね。そこに、コロナです。いつ終焉するかもわかりませんでした」。
ついに友成さんの口から深い溜息が漏れる。溜息を耳にした前任の社長が役員報酬の全額カットを申し出たほどだ。
その後もコロナ禍はつづいたが、行政から「協力金」が支給されるようになり、一息つくことができた。
もちろん、友成さんも黙っていたわけではない。
「シャノアールが所有していた研修施設があって、そこがいい値段で売却できたんです」。ほかにも「オープンが目の前だった新業態があったんですが、結局、オープンしないまま撤退させてもらいました」。カフェ以外、重荷になるブランドはすべてクローズする。
大胆な行動は、友成さんの真骨頂だ。
だが、コロナ禍は世界中を覆い尽くしたまま。
「コーヒーショップは『不要不急』の代表と言われた」と友成さんは笑う。
「たしかに、定食とかじゃないですからね。だからといって、ほんとに『いらない』わけじゃありません。必要だからこそ、珈琲館は50年以上つづいてきたんです」。
「くつろぎといった目に見えない部分で、コーヒーショップの役割がある」と、友成さんは語る。
「コーヒーそのものは不要不急かもしれませんが、くつろいで、ひといきつく空間もコーヒーショップの役割なんです。その役割からいうと、けっして不要じゃないんです。だから、閉めたくなかった」とも。
友成さんのなかでも、葛藤があったにちがいない。
だが、歩みは止めない。
コロナ禍の渦中の2022年には「カフェ・ド・クリエ」を買収している。そして、コロナ禍が終焉した今、業績はV字回復。
「2023年度でいうと、飲食全体の戻りが約80%ですが、カフェは約90%なんです。そのなかで私たち、C-Unitedは約140%を実現しています」。
そう言って、胸を張る。社会にとって、コーヒーショップがいかに重要な存在かを改めて示す結果になったからだ。
ただし、コロナ禍が明けたからといって、それだけで業績が回復したわけではない。業績回復の背景には友成さんが描いたマーケティング戦略がある。
「ニーズとウォンツ」と友成さん。「珈琲館」「カフェ・ベローチェ」「カフェ・ド・クリエ」と、ブランド毎に顧客の行動心理をニーズとウォンツに分け、戦略を巧みに組み立てている。
その効果がもっとも顕著に現れたのは「カフェ・ベローチェ」だろう。
「いっぷく需要」を取り込みつつ、新たな客層をつかむ。ただし、コンセプトは同じ。「from to」の中間点である。「だから、スピードが大事。また、ドリンクだけじゃなく、フードにも力を入れました」。
その結果、パスタなどのフードが業績アップに寄与することになる。「from to」の中間点にある食事というニーズを掘り起こした格好だ。
ちなみに、「カフェ・ベローチェ」には、もともとパスタはあったそうだが、ベローチェのコンセプトに沿って提供スピードを上げられるパスタに切り替え、拡充した。これが、2021年のこと。
「開発はたいへんだったが、いったん完成すれば、設備も軽いので、全店に一気に導入することができた」といっている。
その結果、「売上がどーーーんと増えた」と友成さん。
「カフェ・ド・クリエもじつは、様々な施策でほぼ全店、黒字化にはなっています。ただ、まだ、赤字じゃない程度なんです(笑)。だから改めて、ブランドを見直し『からだハピネス』という新たな軸でブランディングを進めていく予定です」。
「簡単にいうと『今日はちょっとからだにいいものを』といった時に、『じゃあ、カフェ・ド・クリエに行こう』となればいいなと。そのブランド力強化のマーケティングテストが、この3月(2025年)に、『恵比寿ガーデンプレイス店』と『日本橋三丁目スクエア店』の2つのカフェ・ド・クリエショップで始まります」。
カフェ・ド・クリエが友成さんがいう「儲かるレベル」になり、利益に寄与するようになれば、どれだけアップするか楽しみだ。
今回のインタビューでは、教育についても話をうかがった。とくに、米国マクドナルド本部の教育機関「ハンバーガー大学」のプロフェッサーに任命され、世界中のマクドナルドの中間管理職スタッフを指導されていた時の話は印象的。
じつは、米国マクドナルドから名誉教授に認定されているので、今も「名誉教授」の称号をもっている。また、教育はマニュアルといったツールをつくることではなく、「システムをつくること」という話にも感銘を受けた。
「システマチックラーニングプロセス」だという。<トレーニング(教わる)20%>→<ラーニング(学ぶ・実践)70%>→<セルフデベロップメント(自己啓発)10%>のシステムによって、人は育つという。
マネージメントにも言及されている。
「日本は単一民族だったから、今までは多様性に目をつぶっていることができました。しかし、現代のように多様性が語られ、外国人スタッフが多くなった今からはそうはいきません」。
「私が米国マクドナルドでプロフェッサーとして対峙したのは20以上の言語をもつ120ヵ国以上の生徒たちです。上司もエジプト人、カナダ人、フランス人でした。そのなかでは、ダイバーシティマネジメントが重要になります。これは、若手とシニアという世代間のマネジメントにもつながります」。
こちらも深い話である。
ちなみに、友成さんは2024年12月19日に放送されたテレ東の看板番組「カンブリア宮殿」に出演されているので、そちらもご覧いただきたい。※視聴にはテレ東Bizの登録が必要です。
最後に、今からの取り組みの一つに挙げられた「海外戦略」についても伺った。
「1年以上前から準備を始めているのが、インドです。インドは富裕層だけで、日本の人口とおなじくらいいるんです」。
「日本独自の喫茶店という文化を、広める。それが面白いでしょ」といいたげ。
マクドナルドが黒船となって日本に登場したのは、1971年、銀座。半世紀が経ち、日本に根づいたファストフードの文化。
果たして、友成さんは日本で、またインドなど海外でどんな文化を花開かせようとしているんだろうか。
一杯の珈琲がつむぐ文化と、ハピネスが世界中に広がればいい。その時には「日本飲食業株式会社構想」は、「世界飲食業株式会社構想」にアップデートされているかもしれない。
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