人を2時間座らせることが出来るのって音楽、映画、そして飲食くらいだと思うんです。音楽、映画は受動的だけど、飲食は非常にポジティブで能動的。それって今はすごく少ないから、大切なものだと思うんですよね。飲食業というのは、その大切なものに携わっている仕事だということ。

それに僕が常にスタッフに言っているのは、我々の職業は語学があれば世界中で働くことができるという事です。グローバルプレイヤーになれるっていうのが飲食業の強さで、そういう意識を持ってすれば、今の時代では飲食業のステイタスが低いとは思いません。業界というよりは個人の意識の問題だと思いますね。

例えば、どっかのオヤジが格好良く見せようとして、ギアもうまく入れられないのに真っ赤なフェラーリ乗って、アルマーニ着て、ステイタスだって言ってるのは違うと思うんです(笑)
 ステイタスっていうのは内側から上げていくものなんですよ。自ら気持ちとかプライドを上げていかないといけない。

確かに僕が小さい頃はレストランビジネスなんて言葉は無くて、もっと昔で言えばただの水商売でした。でも我々はプロの水商売だっていうプライドを持っています。
 昔は会社員に疲れて焼き鳥屋でもやるかって人がいたけど、今は頑張って焼き鳥屋やってた人が、諦めて会社員になる時代です。誰でも出来る仕事ではないんですよ。本当に好きな人じゃないと出来ないんです。
 ただ勘違いしちゃいけないのはレストランが好きな人とレストランで働く事が好きな人とは真逆だという事。レストランで働いたとたんにレストランに行けなくなりますからね。

もちろん問題もあると思いますよ。例えば、業界全体でスタッフの働いている時間とか、給料等を改善していく努力をしていかなければならないとは思いますね。

教育はもちろん大事だけど採用の方が大事だと思います。それはさっきも言ったように簡単な仕事では無いからね。感性が豊かじゃないといけないし、育てられ方とか生き様がモロに出るのが我々の仕事なので、ダメな人を育てるより、良い人を更に伸ばす方がいい。向き不向きがすごくあるから教育だけではどうしようも無いところはありますね。

弊社では決まった教育制度はとくに無いんです。例えばチェーン展開しているような企業ですと、店長やってスーパーバイザーやって…というのがありますけど、うちの場合はカフェで勤めてる子が、1年半後にレストランでサーバーになってる可能性だってある。シドニーでの仕事も頑張れば可能だし、たくさんチャンスがあるっていう事が教育に繋がっていると思います。
 つまり、社内で自分の能力を上げていくことが出来る環境にあるんです。教えられるっていうより、自ら掴みに行くっていうスタンスであって欲しいし、やる気になれば選択肢はたくさん用意しています。そういう事もやりがいに繋がっていると思いますね。

うちだけの事じゃないけど諦めない人は必ず活躍できます。世の中、諦める奴が多いけど、自分がやるって言ったことをやりきれる奴。だから嘘つかない人、つまり自己信頼という意味での自信がある人が欲しいです。結局は信念もってやりきれる人ですね。
 人は迷うけど、その度に仕事変えてもしょうがない。やっぱりやりきれるって事は大事だと思うし、そういうエネルギーを持っている人がいいですね。 あとは仕事を生み出せる人。社内ではクリエイティブっていう言葉を使うんだけど、生み出して行く力っていうのは何ものにも代え難い。口開けて餌待ってる人はうちには向かないですね。やはり自分から取りに行く人が向いています。

クリエイティブっていうとたくさんの事をさすけど、デザインとかメニューとか物を作っていくという事だけではなくて、最も大事なのは人間関係を作っていくという事だと思います。
 それには裏切らない、嘘つかない、筋を通す、約束を守るとか、人間関係を築く上で当たり前の事が大切。それが出来ない人が多すぎるんだよね。いたってシンプルな事です。

人生そのもの。それ以外の何ものでもないですね。
 例えば、時として息子のようであったり、父親のようだったり、母親のようだったりするかもしれない。
 そんな風に、仕事っていうのはいろんな姿に変えていくかもしれないけど、無くてはならないものだし、無くなったら困るし、自己表現の場でもある。まさしくそれが人生だから、それ以外の何ものでもないんじゃないかな。