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第41回 「株式会社ど・みそ」 代表取締役 齋藤賢治さん

北海道風の味噌ラーメンとは一線を画す"濃厚味噌ラーメン"を開発し、東京を代表する味噌ラーメンの店として絶大な人気を誇る「ど・みそ」。店主の齋藤賢治さんは、大手証券会社のシステムエンジニアとして80人の部下を抱え、数十億円のプロジェクトを担当するなど10年以上活躍した後、異業種のラーメン業界へ転身。繁盛店をつくり出した背景とは…。

プロフィール

1966年東京都江東区深川生まれ。
千葉工業大学卒業後、89年山一証券へ入社。97年、山一証券の自主廃業を受け、当時の社長が起業した新会社へ移籍。同社で6年間勤務ののち、05年1月に退職。
3ヵ月間のラーメン店修業ののち、06年3月に「ど・みそ」京橋本店を開業し、7坪・9席で1日200〜300人を集客する繁盛を築く。
09年12月に「げんまん 人形町店」、10年4月に「ど・みそ八丁堀店」をオープンし、現在3店舗(「げんまん」人形町店では二毛作店として朝らーめん専門、「ど・みそ」八丁堀店2Fではみそ鍋ダイニング)を展開中。開業準備からのど・みその軌跡が綴られたブログは必見!

リンク

http://blog.livedoor.jp/do_miso/

齋藤賢治さん ど・みそ 京橋本店
住所 東京都中央区京橋3-4-3 千成ビル1F
TEL 03-6904-3700
営業時間 平日11時〜22時30分、土曜11時〜21時、日・祝日 12時〜21時
(材料がなくなり次第終了)
定休日/不定休
システムエンジニアから、ラーメン業界に転身。
株式会社ど・みそ1
私のサラリーマン時代は、とにかく365日休みがないような生活でした。夜中もクライアントに呼び出されるし、盆も正月もありません。毎日、睡眠2〜3時間で、最後の3年間は悶々としながら働いていました。
単純にラーメンが好きだったのと、今から和食とか難しいことはできないと思い、食べ歩きを重ねながら物件を探して行きました。ただ、ラーメン店は大変だということもわかっていたので、はじめは一人でできる10坪以下の物件で、自宅から30〜40分以内で通える範囲で探しました。
でも、5軒の不動産屋にお願いして、8ヵ月待っても全然出てこない。今考えれば、飲食専門の不動産屋に依頼すればもっと出てきたと思うのですが、素人だったので一般の不動産屋にお願いしていたんですよね。
現在の場所は、たまたま知人の紹介で、ラーメン店をやっていたご夫婦が引き継ぎたいということで借り受けました。スケルトンに戻して、配管もボロボロだったので入れ替えたため、結局、開業資金は2000万円ほどかかってしまいましたが、公庫の融資で1200万円を借りることができました。10年分の損益を全部出して、店の前の時間帯別通行量の写真も添えて出したので、すぐに申請がおりました。こういうことは、得意分野でしたから(笑)。
ブログを営業ツールに使い、1日200超の人気店に
味噌ラーメンを主軸にしたのは、東京にはおいしい味噌ラーメン店が非常に少なかったからです。ということは、競合も少ないということで、おいしいものを出せばいけるのではと考えました。味噌は流行り廃りもないですしね。
都内にも多い北海道系の味噌ラーメンは、白味噌ベースの甘めの味なので、対抗して赤味噌ベースの味噌の味が全面に出る濃厚な味を作りました。この味噌だれはPBで作っていて、ほかのラーメン店にも卸したりしています。
また、開業を決めてから始めたのがブログ。当時は飲食店のブログというのはまだ少なかったですが、今後営業ツールになると確信していました。物件の契約から店舗づくり、申告やオープン直後の様子など、すべてをブログで公開していたのはなかったですからね。それで、ラーメンフリークの方とかグルメな方々に見てもらえるようにしていました。
それでも、開業当初は夜のお客様が3人とかいう日もあって、閑古鳥が鳴いていましたよ。店にパソコンを持ち込んで「今日はひと桁しか出ていません…」て書き込んだり。そのへんのことも、全部ブログに書いてありますよ。
ラーメンの魅力は、お客の反応がダイレクトに伝わること
ラーメン店を開業して嬉しいと感じるのは、自分が作ったラーメンに対してすぐに反応がかえってくること。これは、前職では得られなかった感覚でしたね。ひと口目のスープを飲んだときの表情で、だいたい反応がわかります。「おいしい」って言われたら、やっぱりすごくうれしいですよね。
あと、ラーメン店をはじめてから、ストレスはまったくないですね。会社を辞めて1年で、健康診断の数値はすべて正常に戻りましたから。開業した年は、毎晩1時、2時まで仕事をしてタクシーで帰って、翌朝6時には来ていましたが、ストレスがなかったせいかキツイとは思いませんでした。
もし、もう一度30代に戻れたとしても、絶対にラーメン店をやっていると思います!10年若かったらもっといろいろなことができたと思いますし、もしかしたら50店舗くらい展開していたかも(笑)。
今後の目標とか展望とかもよく聞かれるんですが、特にないです!と答えています。目標を掲げると、その達成に向かって無理をしてひずみが出てしまう。ラーメン店をやるまでずっとそれをやってきたので、今はやめました(笑)。毎日楽しく、おいしいものを作れば、自然に道は拓けてくるのだと思います。
どんなラーメン店主になりたいか、明確なビジョンをもつ
これからラーメン店をやりたい人はまず、いろいろなラーメンを食べることかな。でも、ラーメンだけ食べていてもだめ。ラーメン店と一言で言っても、自己満足でめざす味を追求する人、経営者として店舗展開をしたい人などいろいろなタイプがいるので、まずは自分がどういう経営者になりたいかをしっかり吟味したほうがいいと思います。競合が激しいからこそ楽しい部分もありますし。
それから、ラーメンを作っているだけがラーメン店の仕事ではないということ。従業員にはよく「店に入ったところから出るまでが1杯のラーメンだ」と言っていますが、清潔感のある涼しい空間で食べるのと、空調のきかない汚れた空間で食べるのでは、同じラーメンでも違いますよね。顧客サービスも含めた店づくりを考えていくべきだと思います。