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第52回 パクチーハウス東京 オーナー 株式会社旅と平和 代表取締役 佐谷恭氏

世界初のパクチー専門店として、全国各地からディープな“パクチー・ファン”が集まっている「パクチーハウス東京」。東京・世田谷区の“交流する飲食店”として、いち早くTwitterなどを活用してファンを獲得し、ソーシャルメディア集客で成功している店としても知られている。“パクチーを食べて異文化交流、それがやがて世界平和につながる”――佐谷社長の独特の世界観に迫る。

プロフィール

2007年11月にオープンした「パクチーハウス東京」のオーナーであり、「日本パクチー狂会」の会長や日本手食協会・理事長などを務める。最近話題になっているコワーキング・スペース「PAX Coworking」の主宰でもある。これまで旅した国は50カ国以上。

リンク

http://paxihouse.com/tokyo/

佐谷恭氏 パクチーハウス東京
住所/東京都世田谷区経堂1-25-18 2F
TEL/03-6310-0355
営業時間/ディナー 18:00-23:00(LOは22:00)
定休日/無休
あえて“好き・嫌い”の分かれるパクチーに特化
パクチーハウス東京
「なぜパクチーの専門店をやろうと思ったのですか?」――取材ではたいてい初めにこう聞かれます。もともと私は飲食店をオープンしたいという願望があったわけでもないので、昔からの友人には「なんでお前が飲食店を?しかもパクチー?え〜?」と驚かれたこともあります。(笑)そうですよね、ハーブの中でもすごくクセがあって、「好き・嫌いがはっきりと分かれるパクチーの専門店を、なんでわざわざ?」という感じなのでしょうね。

でもね、私はパクチーはとても魅力的な食材だと思っています。日本ではあまり食べられていないかもしれませんが、世界150カ国以上で食されているとてもポピュラーなハーブ。英語ではコリアンダー、中国語では香菜として世界中で親しまれています。海外を旅してみればわかりますが、パクチーと出会わない旅は珍しいくらいです。

しかもパクチーの葉や茎、花、根、種はそれぞれ違う味が楽しめます。それなのに日本では、ベトナム料理のフォーなどにのせる脇役くらいでしか知られていない。それではもったいない。そこで「パクチーハウス東京」ではあくまでもパクチーを主役にして、パクチーを愛する人に惜しみなくパクチーのおいしさを提供し、さらにパクチーが苦手な人にも食べていただける新しい料理をたくさんご用意しているのです。

当店ではパクチーの天ぷらや、パクチーを使ったパスタ料理などまで揃えています。中でも人気なのは、お皿にパクチーをたっぷりと、まるで絨毯のように敷き、その上にラム肉の炒めをのせた「ヤンパク」(税込み935円)です。
パクチーを介した平和的な異文化交流
パクチーハウス東京2
私はこれまで世界約50カ国を旅したことがあるのですが、私にとってパクチーは異文化理解の象徴的な存在です。ちなみに当社の社名は「株式会社旅と平和」です。

例えば旅の途中で、現地の飲食店などに出かけて現地の人と異文化交流をはかる過程で、必ずといっていいほど出会うのがパクチー。国籍や年齢、立場などを超えて、多くの人々と対等につながって、会話や酒を存分に楽しむ空間はとても心地いい。これこそ旅の醍醐味。そしてそんな時、たいていテーブルのお皿にはパクチーが存在している…。

「世界中の人々が笑顔でつながる、そんな旅先での非日常的な空間を、現代の日本にそのまま持ち込んでみたい」――そう思って「パクチーハウス東京」をオープンしました。パクチーを介した平和的な異文化交流のワン・シーンを、あえてカスタマイズしないで、そのまま日本に創りだすことで、日本人の日常に何かインパクトを与えてみたいと思ったのです。

だから当店のサブタイトルは“交流する飲食店”。“人とのつながり”をとても大事にしているのです。当然、SNSでの人とのつながりもかなり濃厚です。オープン当初はブログやmixiなどで人とつながっていましたが、時代の変化とともにTwitter (http://twitter.com/#!/paxi) やFacebook (http://www.facebook.com/#!/paxihouse)へ移行しているところです。

一時は来店客の約7割が店内でiPhoneを使って交信していることもありました。最近はオフ会も多いのでリアルでもつながっているお客様も多いですが、実際に出会う前からお客様同士が交流しているケースも多いのです。
笑いが絶えない仕掛けが満載!
愉快な非日常体験を提供するのが当店のモットーですので、いろんなところにユーモアを用意しているのも特徴です。例えば当店には「パクパクピッグパクポーク ビッグパクパクパクポーク」(税込み1260円)という豪快な豚肉料理があります。早口言葉みたいですが、ぜひ一息で言い切ってください。(笑)

店ではお客様が注文する時に「パクパクピッグパクポーク ビッグパクパクパクポークを一つください」と言い、オーダーテイクした店員も「パクパクピッグパクポーク ビッグパクパクパクポークですね」と確認しています。まるで早口言葉のように「パクパクピッグパクポーク ビッグパクパクパクポーク」が飛び交うので、初めて来たお客様もとりあえず注文してみるという現象まで起きて、店内が「パクパクピッグパクポーク ビッグパクパクパクポーク」の話題でかなり盛り上がるのです。知らないお客様同士でもすぐに仲良くなってしまいます。

当店では「世の中の半分はダジャレで出来ている」という名言を支持しており(笑)、パクチーにちなんで「89」をいろんなところに使っています。お料理も890円が多いし、バイトさんの時給も890円〜、当社の資本金も890万円…。

こんなふうにユーモアとウィットに富んだ店づくりをとても気に入ってくれた人たちが、遠方からでもわざわざ集まるようになって、最近では「PAX Coworking」というコワーキング・スペースも店と同じビル内に設置するようになってきました。メンバーのすべてがパクチー好きだから入るわけではないですが、あっという間に“パク好き”、“旅好き”になっていきます。(笑)

時間がなくて旅に行けないと嘆く人たち。国内で旅の感覚を感じたいのなら、ぜひ当店に一度足を運んでみてください。つまらない日常の中にいると思っている今の自分に、大きな意味を見出せるかもしれませんよ。きっと笑顔の輪が広がりますよ。