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第54回 株式会社エル・ディー・アンド・ケイ 代表取締役 大谷秀政氏

これまで「ガガガSP」、「かりゆし58」などのアーティストを輩出してきたインディーズレーベル株式会社エル・ディー・アンド・ケイ。代表取締役の大谷秀政氏は、単なるプロダクション事業にとどまらず、カフェ・ライブハウスの経営や出版事業など多角的な経営手腕を発揮し、右肩上がりの成長を実現。飲食1号店の「宇田川カフェ」は、カフェブームの中で“夜カフェ”という新しいスタイルを確立し、10年を経過した今も過去最高の売上を更新して絶好調だ。さらに2012年は、上海での飲食事業もスタートする。

プロフィール

1968年愛知県生まれ。日本大学文理学部社会学科卒業後、23歳で企画・デザイン事務所(有)ビックボス設立。1995年に(株)エル・ディー・アンド・ケイに社名変更。音楽事業を中核に、2001年からはカフェ事業もスタートし、「宇田川カフェ」など7店舗を展開。2012年には上海へのカフェレストラン出店も決定しており、今後はアジア展開も視野に入れながらさらなる発展をめざす。

リンク

http://www.ldandk.com/

大谷秀政氏 宇田川カフェ
住所/東京都渋谷区宇田川町 33-1グランド東京会館 1F
TEL/03-5784-3134
営業時間/11時30分〜翌5時(翌4時LO)
定休日/無休
一夜にして600万円の借金。一念発起して事業を興す
株式会社エル・ディー・アンド・ケイ
僕が大学を卒業した年は、まだバブルが弾ける直前で、今のように就活をすることもなく、大学3年の1月から空間プロデュースの会社に籍を置き、大学に通いながら会社へも行くという生活をしていました。

その後、知人と立ち上げたのがビックボスという会社で、今の会社の前身です。ちょうどパソコンが世に浸透し始めた時期でもあり、主にパソコンを使ってデザインをする仕事をしながらクラブイベントを企画していました。

でも、ある時、このイベントが“大ゴケ”したんです。一夜で600万円の借金を背負うことになって…。さすがにこたえて3日間くらいは家でふて寝していたのですが、寝ていても死ぬわけではないし、仕事も来ないし(笑)。コネもお金もないところから仕事を再スタートするには、やっぱり僕にはソフトの仕事しかなかったんですね。それが音楽だったのです。

もともと音楽は好きで、昔の音楽を掘り起こしてジャケットのデザインをしたりしていたのですが、古いものだけでは限界がきてしまうのです。「これからは新しい音楽を開拓していかなければ…」と思ったのが、今の会社を興したきっかけですね。当時は今のように“インディーズ”という言葉もなくて、ようやくテープからCDに変わり始めた頃でした。
「宇田川カフェ」は昨年12月に過去最高の売上を記録!
株式会社エル・ディー・アンド・ケイ2
最近では、よく「音楽会社なのになぜカフェもやっているんですか」と質問されるのですが、もともとは所属バンドのメンバーたちに溜まり場を作ってあげたいと思ったのがきっかけなんです。

弊社は創業当時から渋谷を拠点にしてきたのですが、夜遅くまで営業している店はチェーン店ばかりで、自分たちが行きたいと思うようなかっこいい店がなかったんです。加えて、僕がコーヒー好きなので、おいしいコーヒーを飲める店を渋谷に作りたいという思いもありました。

だから、最初は一般のお客さんが来なくても経営が成り立つように、20坪くらいの規模で看板も出さずにこっそりと営業していました。その後、2006年5月に移転をしなくてはならなくなり、店の規模も38坪60席も拡大しました。

その時に、「渋谷で一番の店になろう!」と決意したのです。現在は渋谷だけでコンセプトの異なるカフェを4店舗、展開しており、どこも好調ですが、とりわけ話題性の高い「宇田川カフェ」は、多い時で1日600人ほども集客しています。昨年12月には過去最高の1500万円を達成しました。

飲食店はほかに新宿と品川のバー、大阪のカフェで、飲食は計7店舗。ライブハウスも含めた店舗事業が会社の売上の4割を占めています。今後もこのバランスを保っていきたいと考えています。
“夜カフェ”スタイルの確立し、上海へ進出!
株式会社エル・ディー・アンド・ケイ3
「宇田川カフェ」では、創業時から夜の営業に力を入れ、“夜カフェ”という新しいスタイルを打ち出してきました。コーヒーだけでは売り上げが立たないから、夜はお酒を飲んでもらおう…という経営的な戦略もありました。お酒だけで80種以上と、バーに負けないくらいの品揃えをしていることもあって、売上の構成としては、約50%をアルコールが占めているところです。

一方、フードメニューは、「これまで自分が経験してきた中で、もっともおいしい料理を出す」のをモットーとしています。創業からの看板商品であるココナッツミルクカレーや宇田川チーズケーキ、さらに各店舗でオリジナルのメニューを提供しており、食事目的のお客様も多いです。夜の客単価は2000円を超えています。

そんな店を、当社では「やる気のある人間に任せる」のが基本方針。店長クラスはじめ、創業からのメンバーが多く、辞める人が少ない点も活気ある店づくりにつながっていると思っています。

そして2012年は、初めての海外進出を予定しています。場所は上海。築100年以上の歴史的建造物が並ぶ外難地区です。今春のオープンを目処に商業開発が進んでいるエリアで、上海観光の目玉として世界的にも注目されています。

弊社では2年前から上海の店舗の交渉を続けてきました。従来にない、ハレの日の非日常的レストランをオープンさせる予定です。個人的にも、これから先10年はアジアの時代だと感じています。上海への出店を機に、すでに多方面から話もきているので、今後は海外でのシェアも拡大していきたいと思っています。